タイ国営の石油・ガス開発会社PTTエクスプロレーション・アンド・プロダクション(PTTEP)は、同国で初めてとなる二酸化炭素回収・貯留(CCS)事業を正式に進めることを決めた。計画地はタイ湾にあるアーティット天然ガス鉱区で、2028年から二酸化炭素を地下に貯留し、最終的には年間100万トンを処理できる体制を整える。総投資額は約100億バーツ(約480億円)で、既存の設備を活用しつつ、新たな施設も建設する。
PTTEPのモントリ・ラワンチャイクン最高経営責任者(CEO)は、「アーティットCCSプロジェクトは、タイにおけるCCS技術の実証となり、北部タイ湾に構想されている『イースタンCCSハブ』の実現にもつながる」と強調した。このプロジェクトは政府の温室効果ガス削減計画(NDCアクションプラン)の重点事業に指定され、税制優遇などの支援も検討されている。
同社はこれまでに地質調査を行い、深さ1,000〜2,000メートルの地下に二酸化炭素を安全に貯留できる場所を確認した。さらに、設計や監視体制を整備し、天然ガスの生産に影響を与えずに事業を進められると説明している。
PTTEPはCCSだけでなく、余剰ガスの再利用、再生可能エネルギーの導入、低炭素開発の優先化、マングローブ植林などにも取り組んでいる。こうした動きは、2050年カーボンニュートラル、2065年ネットゼロというタイ政府の目標に直結しており、2028年の稼働開始は気候政策の大きな節目になるとみられる。
参考:https://www.pttep.com/en/newsroom/press-releases/1083/pttep-moves-forward-with-thailand-s-first-ccs-project-at-arthit-field-to-advance-the-national-net-zero-goal