8月13日、イタリアのエネルギー大手、サイペム(Saipem)は、英bpのインドネシア法人から受注した「タンジュ炭素回収・圧縮(UCC)プロジェクト」の建設を正式に始めた。現地リアウ諸島州のカリムン工場で行われた式典には、政府関係者やbpの幹部も出席した。事業は、パプア州西部の沖合で天然ガスを増産するため、CCUS(炭素回収・利用・貯留)技術と新たな圧縮設備を導入する国家戦略プロジェクトである。
このプロジェクトでは、インドネシアのウバダリ(Ubadari)沖合ガス田から、約3兆立方フィートの天然ガスを追加で生産する計画だ。採掘時に発生するCO2を地下に再注入することで、ガスの回収量を増やすと同時に、温室効果ガスの排出削減にもつなげる。これは、将来的なカーボンクレジットの創出にもつながる重要な取り組みとされている。
サイペムはこの工事で、2つの坑口プラットフォーム、CO2再圧入用のプラットフォーム、約90キロメートルにおよぶパイプラインとケーブル、既存施設との接続設備の設計・調達・建設・据付・試運転までを一括して担当する。
建設拠点となるカリムン工場は、敷地面積およそ140万平方メートル(約346エーカー)で、従業員は5,000人以上。サイペムが世界に持つ工場の中で最大規模を誇り、大型エネルギープロジェクト向けの部材を高い安全性と品質基準で製造している。
着工を記念する「ファースト・スチール・カット」式典には、政府やbpの関係者のほか、サイペム幹部も参加し、節目となるスタートを祝った。
インドネシア政府は、このプロジェクトを国家戦略事業に位置付けており、エネルギー供給力の強化と同時に、CCUS分野での国際連携やカーボン市場への参加も視野に入れている。日本企業にとっても、今後の協業や炭素除去(CDR)事業の足がかりとなる可能性がある。
今後は、プラットフォームの製造と輸送、海上での設置工事などが順次進められ、2027年の稼働開始が目指されている。