台湾と南米の友好国パラグアイが、カーボンクレジット分野で初となる二国間協力に踏み出した。10月1日、台北で開催された署名式で、台湾の彭啓明・環境部長とパラグアイのロランド・デ・バロス・バレド環境・持続的発展部長が、「『パリ協定』下の協力に関する覚書(MOU)」に署名した。両国はこの枠組みを通じ、カーボンクレジット市場の制度整備や能力構築を進め、2050年のネットゼロ達成に向けた協働を強化する方針を示した。
覚書は、外交部と環境部が共同で推進し、外交部常務次長の葛葆萱氏をはじめ、両国の政府関係者と企業代表が立ち会った。今回の合意は、台湾が推進する「総合外交」戦略の一環であり、気候変動対策を外交政策と連動させる動きの象徴と位置づけられている。
協力内容は、
- カーボンクレジットの法規制・ガバナンス体制の整備
- 専門人材の育成と能力強化
- 二国間のプロジェクト認証・移転メカニズムの協調
など多岐にわたる。特に、パラグアイの森林および土地資源が、植林・再植林プロジェクトを通じたカーボンクレジット創出の主要な供給源として注目されている。
パラグアイ政府は2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量を10〜20%削減する目標を掲げており、今回の覚書はその実現を後押しする形となる。バレド環境相は式典で「台湾は信頼できる技術パートナーだ。持続可能な発展のための協力を拡大したい」と述べた。一方、彭環境部長は「両国は排出削減において補完的な強みを持つ」と強調し、長期的な連携を示唆した。
台湾が友好国とカーボンクレジット協力を結ぶのは今回が初めてである。これにより台湾は、国際炭素市場への関与を強めると同時に、外交上のプレゼンスを拡大する狙いを持つ。
世界的には、シンガポールが既に13件のMOUを締結し、そのうち9件が法的拘束力を持つ実施協定へと発展している。台湾・パラグアイ間の取り組みは、こうした二国間炭素取引の新たなモデルとして注目されている。
今回の合意を契機に、台湾は2026年にも国際炭素市場連携の第2弾として、アジア・中南米諸国との協力拡大を視野に入れている。
参考:https://www.mofa.gov.tw/News_Content.aspx?n=95&sms=73&s=120809