Google(グーグル)、Meta(メタ)、Microsoft(マイクロソフト)、Salesforce(セールスフォース)の4社で構成されるカーボンクレジット共同購入団体「Symbiosis Coalition(シンバイオシス・コーリション)」は、調達対象をマングローブ復元を含むブルーカーボンプロジェクトへ拡大すると発表した。同団体は、2026年上半期に第2回となる提案募集(RfP)を開始する予定である。今回の決定は、陸生林に比べ単位面積あたり最大10倍の炭素貯蔵能力を持つマングローブの重要性を評価したものである。
Symbiosis Coalitionは、2030年までに合計2,000万トンの高品質な自然ベースの炭素除去(CDR)由来のカーボンクレジットを契約することを目標に掲げている。今回のRfP拡大にあたり、同団体は「品質基準(Quality Criteria)」を更新した。これには、潮汐環境における土壌炭素のモニタリングや、沿岸域におけるベースライン設定など、マングローブ特有の科学的知見が反映されている。
この基準策定には、The Nature Conservancy(ザ・ネイチャー・コンサーバンシー)やConservation International(コンサベーション・インターナショナル)などの国際NGOに加え、Yale University(イェール大学)やUC Berkeley(カリフォルニア大学バークレー校)のアカデミアが協力した。
マングローブの復元は、炭素吸収源としての機能だけでなく、膨大な経済的メリットをもたらす。報告書によると、マングローブによる洪水防止効果は世界全体で年間820億ドル(約12.3兆円)に上り、毎年約1,800万人を水害から守っていると試算されている。また、世界の野生魚の漁獲量の約3分の1に相当する7,000億匹の稚魚や海棲無脊椎動物の生育を支えており、地域の食料安全保障にも直結している。
一方で、同団体は熱帯泥炭地(ピーランド)のプロジェクト採用については、現時点で見送る判断を下した。泥炭地は極めて高い炭素密度を誇るものの、以下の3点が課題として挙げられている。
- 手法の不足
現在利用可能な信頼性の高い算定手法が限定的であること。 - データの欠如
泥炭の深さや排出係数に関する基礎データが東南アジア以外で不足していること。 - 技術的ガイダンス
湿地農業(パルディカルチャー)と地域住民の生計を両立させる枠組みが未成熟であること。
同団体は、これらの課題が解決され、市場のインフラが整った段階で改めて採用を検討するとしている。
第2回RfPの受付は2026年6月末まで行われる予定である。Symbiosis Coalitionは、マングローブプロジェクトへの需要シグナルを送ることで、海運業やホスピタリティ業界など、沿岸部のレジリエンスに直接的な利害を持つ新たな買い手の参入を促す狙いがある。
米テック大手がブルーカーボンに本格参入したことは、カーボンクレジット市場において「量」から「質と多角的価値」へのシフトが加速していることを示している。特に日本企業にとっては、アジア圏でのマングローブ復元プロジェクトや、高精度な潮汐モニタリング技術で貢献できる余地が大きい。単なる排出相殺手段としてではなく、生物多様性や防災といったESGの文脈を統合した事業設計が、今後のグローバル調達における必須条件となるだろう。
