スウェーデンのエネルギー会社ソーデルエネルギー(Söderenergi)は8月26日、同社が2030年に稼働を予定するバイオマス由来の二酸化炭素回収・貯留(BECCS)設備で発行する「初の炭素除去(CDR)カーボンクレジット」を製薬大手アストラゼネカ(AstraZeneca)に供給することで合意した。両社の拠点があるストックホルム近郊のセーデルテリエ市での発表で、医薬品産業とエネルギー分野が連携してネガティブエミッション市場を育成する初の事例となる。
ソーデルエネルギーはイゲルスタ発電所において、年間最大50万トンのバイオ由来CO2を回収し、地中に永久貯留する計画だ。投資決定は2026年末に予定されており、CO2の分離、輸送、地質貯留、さらに国際的に認証されたカーボンクレジットの発行というバリューチェーンの整備が前提となる。
同社のロベルト・ティングヴァル最高経営責任者(CEO)は「最初のネガティブエミッションがアストラゼネカに割り当てられることを誇りに思う。この契約は当社のBECCS計画への信頼を示すものであり、負の排出産業の立ち上げに寄与する」と述べた。
アストラゼネカ・スウェーデン法人のマリカ・デュ・リエツ持続可能性責任者は「今回の契約は、当社が2030年までに温室効果ガス排出を半減し、2045年までに90%削減するという目標を補完するものだ」と指摘した。
また、セーデルテリエ市のボエル・ゴードネル市長は「ソーデルエネルギーによるカーボン除去は地域にとって画期的な投資であり、アストラゼネカの参画は重要な意義を持つ。将来的にはエネルギーと気候分野の産業クラスター形成につながる」と強調した。
バイオマス由来の排出を永久に貯留するBECCSは、国際的にネガティブエミッションと位置づけられる。パリ協定が掲げる2050年までの温室効果ガス実質ゼロを実現するためには、この技術によるカーボンクレジット市場の拡大が不可欠とされる。今後、スウェーデン国内での制度設計や国際的な認証の枠組み整備が注目される。
参考:https://www.soderenergi.se/nyheter/soderenergi-i-avtal-med-astrazeneca-om-koldioxidborttagning/