海運・インフラ大手のホーグ・エヴィ(Höegh Evi)、石油・ガス開発のアーカーBP(Aker BP)、およびストックホルム港湾局(Ports of Stockholm)の3社は5日、スウェーデン東部のストックホルム・ノールヴィク港における二酸化炭素(CO2)物流ハブの構築に向け、協業を強化したと発表した。2025年5月に発足したパートナーシップは、実現可能性調査(FS)を経て、技術的な詳細設計を行うフェーズへと移行する。これは、スウェーデンが掲げる2045年までのネットゼロ目標達成に不可欠な、炭素回収・貯留(CCS)バリューチェーンの要となる動きだ。
「NICEプロジェクト」が次なる段階へ
本プロジェクトは、「ノールヴィク・インフラ・CCS・イースト・スウェーデン(NICE)」構想に基づくもので、スウェーデン東部およびバルト海周辺の産業排出源から回収されたCO2を集約し、恒久的な貯留地(ストレージ)へ海上輸送するための物流拠点を整備することを目的としている。
3社は今後、ノールヴィク港における物流ノードの技術的レイアウト、処理能力要件、および運用モデルの策定に焦点を当てる。サプライヤーや参画企業と緊密に連携し、将来的な最終投資決定(FID)に向けた準備を進める方針だ。
ネガティブエミッション達成への「物流の背骨」
スウェーデンの国家気候目標、特に2045年までのネットゼロ達成には、大規模なCCSの導入と、バイオマスCCS(BECCS)などによるネガティブエミッション(大気中からのCO2除去)が不可欠とされている。しかし、回収したCO2を貯留地まで確実に運ぶ「輸送インフラ」の欠如が、これまで大きなボトルネックとなっていた。
今回のハブ構築は、スウェーデン中東部の産業クラスターにとって、回収したCO2を国内外の長期貯留サイトへ送り出すための、信頼性の高い「出口」を確保することを意味する。
ホーグ・エヴィのクリーンエネルギー担当EVPであるニルス・ヤコブ・ハスレ氏は、次のように述べている。 「ストックホルム・ノールヴィク港はCO2の集積地として理想的な立地にあり、恒久貯留地へCO2を輸送する船舶(キャリアー)にとってもアクセスが極めて良好だ。我々はパートナーと共に、バルト海CCSバリューチェーンにおける重要な接続点を開発していく」
欧州で加速するCO2インフラ整備競争
欧州では現在、国境を越えたCO2輸送ネットワークの構築が急ピッチで進んでいる。オランダでは既に5つの主要なCO2インフラプロジェクトが進行中であり、国境を越えた貯留・輸送システムの構築を目指している。また、スウェーデン国内でも2025年6月、インター・ターミナルズ・スウェーデン(ITS)とセーデルテリエ港が、メーラレン地域を対象とした柔軟なCO2インフラ開発に着手するなど、地域的な連携が活発化している。
アーカーBPのCCS資産マネージャーであるオーヤン・イェントフト氏は、今回のプロジェクトの意義についてこう強調した。 「これは、堅牢で統合された拡張性のある欧州CCSネットワークを実現する画期的なプロジェクトとなる可能性を秘めており、EUおよびスウェーデンの野心的な気候目標の達成に大きく貢献するだろう」
ストックホルム・ノールヴィク港は、これらの動きの中で、スウェーデン東部における将来のCO2物流と貯留エコシステムの「アンカーポイント(係留点)」としての地位を確立しようとしている。
参考:https://hoeghevi.com/pioneering-collaboration-on-co2-logistics-at-stockholm-norvik-port/

