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ストックホルム市、BECCS由来CDRクレジット75万トンを15年契約で購入 自治体として世界第5位のCDRカーボンクレジット買い手に

2026.05.28 読了 約4分
ストックホルム市、BECCS由来CDRクレジット75万トンを15年契約で購入 自治体として世界第5位のCDRカーボンクレジット買い手に
出典:イメージ

ストックホルム市は2026年5月26日、地元のエネルギー事業者ストックホルム・エクセルギ(Stockholm Exergi)との間で、恒久的なCO2除去カーボンクレジット計75万トンを15年間で購入する長期オフテイク契約を締結したと発表した。年間引取量は5万トンで、これによりストックホルム市は恒久的除去カーボンクレジットの買い手として世界第5位の規模となる。

これまで恒久的除去カーボンクレジットの大口購入はマイクロソフトをはじめとするビッグテックとフロンティア連合がほぼ独占してきた。自治体がこの規模で恒久的除去カーボンクレジットの長期オフテイクに踏み込むのは異例であり、買い手構造の多様化を示す転換点として位置づけられる。

供給源はヴァータンのBECCS施設

クレジットはストックホルム・エクセルギがヴァータン(Värtan)地区で建設中のバイオマス火力発電所併設のBECCS(バイオエネルギーCCS)施設から供給される。施設は2028年の稼働開始を予定しており、フル稼働時には年間最大80万トンのbiogenic CO2を回収する設計である。回収したCO2は液化し、海底下の永久貯留サイトに輸送・鉱物化される。

ストックホルム市の財政担当市政官カリン・ヴァングオード(Karin Wanngård、社会民主党)は今回の購入について、2030年までに領域内で気候ポジティブ、2040年までに完全脱化石燃料という市の目標達成に向けた措置と位置づけている。市はBECCSクレジットを、建設資材や下水処理など、削減が技術的・経済的に困難な領域の排出をカウンターバランスする用途に充当する方針だ。

ストックホルム・エクセルギのCEOアンダース・エーゲルルド(Anders Egelrud)は、自治体・企業による削減努力と恒久的除去カーボンクレジット購入の組み合わせが今後のモデルになるとの見方を示している。

多重資金構造で成立するBECCS事業モデル

ヴァータンBECCSプロジェクトの注目点は、その資金構造の多層性にある。今回のストックホルム市契約は、既存の資金パッケージにさらに自治体公共調達という新たな柱を加えるものだ。

プロジェクトは以下4種類の資金源で構成されている。

第一に、国家補助としてスウェーデンエネルギー庁の逆オークション制度から200億スウェーデンクローネ(約2,890億円)超の支援が確定している。これは地中貯留開始後、最長15年にわたり継続的に支払われる仕組みである。

第二に、EUイノベーションファンドから1.8億ユーロ(約290億円)の補助金を獲得済みである。

第三に、マイクロソフトとの10年契約(恒久的除去カーボンクレジット契約として世界最大規模)およびフロンティア連合からのオフテイクという民間大口オフテイクが基盤を形成する。

第四に、今回のストックホルム市による15年間75万トンの公共調達契約が加わった。

この構造は、BECCS事業の高い設備投資負担を単一の資金源で吸収せず、国家補助・地域補助・民間オフテイク・公共調達の4本柱に分散させたものといえる。とりわけ、自治体が長期固定価格に近い形で公共調達を担う構造は、民間VCMの価格変動リスクから事業者を一部遮断する役割を果たす

もっとも、こうした多重補助構造は追加性評価の観点では論点として残る。国家補助と複数の民間オフテイクが先行確保されているプロジェクトに、後発の自治体購入分がどの程度の追加性を持つかについては、業界内でも評価が分かれる。

編集部の視点

恒久的除去カーボンクレジットの大口買い手が自治体にまで拡大したことは、CDR市場の構造転換点として位置づけられる。

これまでマイクロソフト・グーグル・メタ、そしてフロンティア連合といったテック資本がほぼ独占してきた恒久的除去カーボンクレジット市場に、公共セクターが長期固定オフテイクで本格参入した意味は大きい。BECCSDAC、ERWといった高コストの除去系技術は、立ち上げ期において少数の大口買い手の存在が事業成立の前提となる構造を持つ。ここに自治体が加わることで、買い手プールの多様化と需要の安定化が同時に進む可能性がある。

ヴァータンBECCSプロジェクトの資金構造、国家補助・EU補助・民間オフテイク・公共調達の4本柱は、削減困難領域向けCDR事業の新たな標準モデルとなりうる。日系の自治体・公共部門が恒久的除去カーボンクレジットの長期オフテイクをどう設計するかが、今後の論点となる。

参考:https://www.stockholmexergi.se/nyheter/nytt-avtal-stockholms-stad-koper-minusutslapp/

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カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。