スリランカの主要紅茶プランテーション5社が、国際NGOソリダリダード・ネットワーク・アジア(Solidaridad Network Asia)および現地パートナーのニュークリアス財団(Nucleus Foundation)と覚書(MoU)を締結し、再生型農業の国際認証「Regenagri(リジェナグリ)」の導入とカーボンインセット・プログラムを開始した。対象面積は約36,000ヘクタールに及び、年10万トン規模のカーボンクレジット創出が見込まれている。
今回合意に参加したのは、エルピティヤ・プランテーション(アイトケン・スペンス・グループ)、ケラニ・バレー・プランテーション、タラワケレ紅茶農園、ホラナ・プランテーション(ヘイリーズ・プランテーション)、そしてプレミアム茶ブランドのルンビニ・ティー・バレーの5社である。
Regenagri標準の採用により、各社は土壌炭素貯留や生物多様性強化を実現すると同時に、生成した「カーボン・リムーバル・ユニット(CRU)」を国際炭素市場で取引可能になる。これは欧州連合の森林破壊規制(EUDR)や企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)など、新たな輸入規制に対応するうえで不可欠とされる。
ヘイリーズ・プランテーションのマネージングディレクター、ロシャン・ラジャドゥライ氏は「この枠組みは、伝統的農法と最新技術を融合し、環境保全と労働者の利益を両立させるものだ」と述べた。
ソリダリダード・アジアのマネージングディレクターでRegenagri C.i.C議長のシャタドル・チャットパディヤイ氏も「今回のMoUは、スリランカの紅茶産業を規制遵守の枠を超えて、気候レジリエンスと市場競争力を備えたバリューチェーンへと進化させるものだ」と強調した。
導入されるプログラムでは、土壌診断機や葉面スキャナー、超局地気象観測システムなどデジタル農業ツールを活用し、土壌健康や水資源利用を定量的に管理する。さらに女性農家向けアプリを通じた意思決定支援も進め、持続可能な農業を地域社会全体に根付かせる狙いだ。
ソリダリダードは2008年以降、スリランカで持続可能農業を推進し、バイオガス導入やバイオ肥料普及などを支援してきた。今回の36,000ヘクタール規模の取り組みは、同国の紅茶産業における過去最大級の再生型農業プロジェクトであり、将来的にはゴムやココナツなど他の主要作物にも拡大する可能性がある。
今後、これらのカーボンインセット活動が国際市場でどの程度の価格で評価されるか、また欧州規制への完全準拠により輸出競争力がどこまで高まるかが注目される。