ブルーカーボン連携で水素の価格競争力向上へ South PoleとUNIDOが「カーボンクレジット創出枠組み」開発に着手

村山 大翔

村山 大翔

「ブルーカーボン連携で水素の価格競争力向上へ South PoleとUNIDOが「カーボンクレジット創出枠組み」開発に着手」のアイキャッチ画像

カーボンクレジット開発大手のサウスポール(South Pole)と国連工業開発機関(UNIDO)は2025年12月3日、シンガポールで共同宣言に署名し、低炭素水素開発のためのカーボンファイナンス(炭素金融)拡大に向けた連携を開始した。この提携は、途上国および新興国を中心に、資本集約型の低炭素水素プロジェクトのコスト競争力を高め、産業の脱炭素化を加速させるため、信頼性の高いカーボンクレジット市場の役割を拡大することを目的とする。

提携の核は「クレジット創出枠組み」の開発

この協力は、サウスポールの「アジア・カーボン・エクセレンス・センター(ACCE)」を通じて実行される。両組織は、低炭素水素からの排出削減量を定量化・収益化するための、世界基準に沿ったカーボンファイナンスの枠組みと方法論を共同で開発することに重点を置く。現状、水素プロジェクトの排出削減を測定するための、広く受け入れられた堅牢なアプローチは不足している。この枠組みを構築することで、低炭素水素の普及に必要な環境を整備する方針だ。

パリ協定第6条を視野に入れたプロジェクト創出

両者の協力は、低炭素水素ソリューションの推進、投資メカニズムとしてのカーボン市場の形成、そしてパリ協定第6条などの新しい市場メカニズムに基づくプロジェクト開発の3つを核とする。低炭素水素は、再生可能エネルギーや炭素回収・利用・貯留(CCUS)を活用したシステムなど、低排出経路を通じて製造される。しかし、追加的なインセンティブがなければ、従来の水素製造法よりもコスト高になる課題があった。

長期の資金調達ギャップをクレジット収入で埋める

サウスポールの政策・戦略担当グローバルシニアディレクターであるフレデリック・ガニヨン-ルブラン氏は、「この連携は、UNIDOの深い産業専門知識とサウスポールのグローバルなカーボン市場でのリーダーシップを結集するものだ」と述べた。また、UNIDOの気候・技術パートナーシップ部門チーフであるペトラ・シュヴァーガー氏は、「高い整合性を持つカーボン市場は、回収期間が長い資本集約型水素プロジェクトに追加の収益源を提供できる」と指摘した。この収益源を確保することで、高コストが障壁となっていた低炭素水素への投資リスクを低減し、世界的なネットゼロ経路への移行を支援する。

参考:https://www.southpole.com/news/south-pole-and-unido-join-forces-to-unlock-carbon-finance