南ア初「自然由来の炭素除去」約70万トンが競売へ 国内炭素税とVCMの「二重適合」に注目

村山 大翔

村山 大翔

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炭素プロジェクト開発大手のウィーアクト(WeAct)は、環境市場プラットフォームのエクスパンシブ(Xpansiv)と提携し、南アフリカの草原管理プロジェクトから創出された「自然由来の炭素除去(CDR)」クレジットのオークションを実施すると発表した。対象となるのは69万5,971トンで、ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)だけでなく南アフリカ国内の炭素税制度にも適合する高品質なカーボンクレジットとして、12月8日から10日にかけて入札が行われる。

今回のオークションは、エクスパンシブが運営するCBL取引所にて実施される。放出されるカーボンクレジットは、南アフリカ草原管理プロジェクト(VCS2710)から発行されたもので、検証済み炭素基準(VCS)の認証を受けている。特筆すべきは、このクレジットが国際的な自主目標の達成に利用できるだけでなく、南アフリカ政府が課す炭素税のオフセット枠としても利用可能な点にある。

ウィーアクトのカーボントレーディング責任者であるロイド・バス氏は、今回の入札について「具体的な気候・生物多様性・地域社会への成果をもたらすプロジェクトから、インパクトの大きい自然由来クレジットを確保する稀有な機会だ」と述べた。

本案件の市場的価値は、コンプライアンス市場とボランタリー市場の双方に適合する「二重の有用性」にある。バス氏は、南アフリカの炭素税制度における「拡張承認書(ELOA)」を取得している点に触れ、「2026年以降、税率の急激な引き上げが予定されている中で、コンプライアンス・バイヤーにとっては『購入・保有・売却』の戦略的な機会となる」と指摘した。これは、将来的な価格上昇を見越したヘッジ手段としても機能することを意味する。

対象となるプロジェクトは、南アフリカの9万ヘクタールに及ぶ多年生草原で展開されている。ウィーアクトは絶滅危惧野生生物トラスト(EWT)などのNGOや22の地元農家と連携し、持続可能な放牧や火災管理を導入している。この取り組みは、土壌への炭素隔離(除去)を促進するだけでなく、ハゴロモヅルなどの絶滅危惧種の保護や、干ばつへの耐性強化にも寄与しており、メソドロジーには「VM0026 持続可能な草原管理」が適用されている。

オークションの形式は、シングルラウンドの「Pay-as-Bid(入札価格方式)」を採用しており、最低価格(フロアプライス)は12.00米ドル(約1,850円)、最低入札単位は1万VCU(Verra発行クレジット)に設定された。より高い価格で入札した参加者が、最新のヴィンテージ(発行年度)への優先権を得る仕組みとなっている。

エクスパンシブの戦略的市場ソリューション担当シニアバイスプレジデント、ラッセル・カラス氏は「コンプライアンス市場とボランタリー市場の融合は、今日の市場参加者にとって重要な焦点だ」と述べた上で、「CBL取引所でのオークションを通じて、透明性の高い購入手段と強力な価格シグナルを提供する」と強調した。

参考:https://weact.com.au/inaugural-south-africa-nbs-credits-unveiled-at-auction/