マイクロソフトがインド気候テックVarahaからバイオ炭由来のカーボンクレジット10万トン分を購入

村山 大翔

村山 大翔

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米マイクロソフト(Microsoft)は2026年1月15日、インドの気候テック企業であるバラハ(Varaha ClimateAg)との間で、バイオ炭を用いたCDRクレジットに関する大規模な買取契約を締結した。

この合意により、マイクロソフトはインドの小規模農家が生成するバイオ炭プロジェクトから、今後3年間で10万トン以上のCDRクレジットを調達する。

本提携は、同社が推進する「2030年までのカーボンネガティブ達成」に向けたポートフォリオ拡充の一環であり、アジア市場におけるCDR事業の加速を象徴する動きとなった。

今回のプロジェクトでは、インドのマハラシュトラ州を中心とした綿花栽培農家から排出される残渣(ざんさ)を原料として活用する。従来、これらの農業廃棄物は野焼きによって処理され、大気汚染の原因となっていたが、バラハが導入する18基の産業用ガス化炉を通じてバイオ炭へと転換される

生成されたバイオ炭は再び農地に散布され、数百年以上にわたって炭素を地中に固定するだけでなく、土壌の保水力向上や肥料効率の改善にも寄与する。バラハのマドゥル・ジャイン最高経営責任者(CEO)は「単なる炭素除去にとどまらず、農家に対して野焼きを回避するための経済的インセンティブを創出している」と、その意義を強調した。

マイクロソフトによる今回の決定は、炭素除去手法の中でも「耐久性」と「スケーラビリティ」を重視する近年の潮流を反映している。S&Pグローバル(S&P Global)の報告によれば、2025年納期のバイオ炭カーボンクレジットの市場価格は1トンあたり約150ドル(約2万2,500円)前後で推移しており、森林再生などの吸収系クレジットに比べて高価であるものの、除去の確実性が高いと評価されている。

マイクロソフトでCDRプログラムディレクターを務めるフィル・グッドマン氏は「本契約は当社のポートフォリオの多様性を広げるものであり、アジアにおけるバイオ炭CDRの成長と農家への副次的利益の両立に向けた前進である」と述べた。

バラハは2022年の設立以来、インドやネパール、バングラデシュで20以上の炭素プロジェクトを展開し、急成長を遂げている。同社は2025年1月にも米グーグル(Google)との間で10万トン規模の契約を締結しており、世界的なIT大手によるクレジット争奪戦の中で存在感を高めている。

今回のマイクロソフトとの契約期間は15年に及び、プロジェクトの累計除去量は200万トンを超える見通しである。バラハは独自のデジタル測定・報告・検証(dMRV)技術を駆使して透明性を確保しており、これが大手バイヤーの信頼獲得につながった。

今後は、契約に基づいた最初のガス化炉がマハラシュトラ州の綿花研究農場に隣接して設置される予定である。18基の炉がすべて稼働すれば、インドの綿花地帯における広範囲な脱炭素化と農村所得の向上が期待される。マイクロソフトは今後もインディゴ(Indigo)やルビコン・カーボン(Rubicon Carbon)といった他社との契約を継続する方針であり、次世代のCDR技術への投資をさらに加速させる構えだ。

マイクロソフトによる今回のバイオ炭クレジット調達は、単なる排出オフセットを超えた「CDR市場の成熟」を物語っている。バイオ炭は、直接空気回収(DAC)よりもコスト効率が良く、森林吸収よりも炭素固定の永続性が高いという「中間的な最適解」として、現在テック企業の資金を最も吸収している分野である。

特筆すべきは、インドという巨大な農業国が、世界的なCDRの供給源として完全に定義された点だ。バラハのような企業が独自のデジタルMRV(測定・報告・検証)を武器に、グーグルやマイクロソフトといった巨大バイヤーを立て続けに獲得している事実は、クレジットの「質」さえ担保できれば、新興国の農業由来クレジットが国際市場で高値で取引される実例を示した。

日本の商社やスタートアップにとっても、東南アジアや南アジアの農業残渣を「炭素の貯蔵庫」に変えるビジネスモデルは、極めて再現性の高いベンチマークになるだろう。

参考:https://www.prnewswire.com/news-releases/varaha-signs-carbon-removal-agreement-with-microsoft-302662101.html