「ボランタリーカーボンクレジット市場と統合」シンガポール、Gold Standard、Verra パリ協定6.2条のクレジットプロトコル最終版を公表

村山 大翔

村山 大翔

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シンガポール首相府戦略グループ傘下の国家気候変動事務局(NCCS)と、世界最大級の独立系カーボンクレジット市場標準策定組織であるゴールドスタンダード(Gold Standard)、およびベラ(Verra)は2025年11月12日、「パリ協定第6条2項クレジットプロトコル」(Article 6.2 Crediting Protocol)の最終版を公表した。

このプロトコルは、各国政府が既存の独立系カーボンクレジット認証プログラムを活用して国別削減目標(NDC)を達成することを支援し、コンプライアンスカーボンクレジット市場とボランタリーカーボンクレジット市場の構造を統合することで、国際的な気候行動を迅速化・拡大することを目的とする。

パリ協定第6条第2項は、各国政府と民間セクターが市場メカニズムを通じて国際的に協力し、それぞれのNDC目標を達成することを可能にする。この新しいプロトコルは、広く利用され、確固たる実績を持つ既存の独立系標準策定組織の専門知識を活用することで、参加国政府が独自のクレジット標準を開発する負担を軽減し、排出削減および吸収量を迅速に認証できるようにする仕組みだ。

ベラのマンディ・ランバロス(Mandy Rambharos)最高経営責任者(CEO)は、この動きについて「世界の気候目標を達成するために必要な規模にカーボン市場を拡大するには、断片化を減らす必要がある。このプロトコルは、政府が(自主的市場の)既存インフラを、迅速かつ容易に国内目標達成に活用するための指針を提供する」と述べ、ボランタリー市場基盤の活用を強調した。

プロトコルの主要な特徴は以下の通りである。

  • 役割と責任の明確化
    第6条第2項に参加する政府、独立系標準策定組織、および市場参加者(プロジェクト開発者など)の役割と責任を記述。
  • 整合性を確保する手続き
    承認、初回移転、償却/使用、および対応調整(Corresponding Adjustments)を含む、クレジットの第6条ステータスの整合性を確保するための標準化されたコミュニケーション手順を規定。
  • 標準化された表示
    独立系標準策定組織の登録簿における、クレジットの第6条ステータスの標準化されたラベリング。
  • 報告ガイドライン
    独立系標準策定組織が、第6条に基づく政府の報告要件をどのように支援できるかについての指針。

シンガポール国家気候変動事務局(NCCS)のベネディクト・チア(Benedict Chia)局長(気候変動担当)は、「このプロトコルは、政府と独立系クレジットプログラムに対し、第6条第2項の協力を促進するための標準化されたアプローチを提供する」とし、市場関係者に対しても、気候変動へのコミットメントを達成するためにカーボンクレジットをどのように活用できるかについて、より大きな確実性と明確性を与えると指摘した。

プロトコル開発の概念は、2023年12月の第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)で初めて発表された。プロトコル最終版は、2024年11月のCOP29で第6条第2項のルールが採択されたことを受け、政府や市場関係者との継続的な協議を通じて、関連する決定事項を組み込みながら開発された。

今後1年間で、これら3つの組織は、関心を持つ政府や市場関係者と協力し、プロトコルの試験運用と実用化を進め、包括的かつ効果的なガバナンスの枠組みを模索する計画だ。さらに、国際的に移転される緩和成果(ITMOs)の識別子、歳入分配(SOP)のために確保されたクレジットの管理、および世界全体の排出量削減(OMGE)といった分野について、第6条の実施が進むにつれて詳細を詰め、プロトコルを強化していく方針が示されている。

参考:https://verra.org/singapore-gold-standard-and-verra-publish-article-6-2-crediting-protocol/

参考:https://www.goldstandard.org/news/singapore-gold-standard-and-verra-publish-art6.2-crediting-protocol