独Senken、Ocellと提携し欧州森林カーボンクレジットを拡充 「IFM」手法で高品質なCDRを提供

村山 大翔

村山 大翔

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カーボンクレジットのマーケットプレイスを運営する独ゼンケン(Senken)は2026年2月19日、同じくドイツを拠点とする炭素除去(CDR)スタートアップのオーセル(Ocell)と提携したと発表した。

この提携により、欧州の森林管理を改善することで創出される高品質なCDRクレジットが、ゼンケンの法人向けポートフォリオに加わる。欧州企業を中心にCSRDへの対応が急務となる中、検証可能で透明性の高い自然由来の炭素除去ソリューションとして注目を集めている。

森林管理の「質」で炭素を固定 IFM手法の核心

今回の提携の核となるのは、IFM(森林管理改善)と呼ばれる手法だ。これは、単に木を植える(植林)や森林破壊を防ぐ(REDD+)のではなく、既存の管理林において収穫周期の延長や、単一樹種から気候変動に強い混合林への転換を行うことで、森林に蓄積されるバイオマス量を増加させるものだ。

オーセルは、欧州全域で80万ヘクタール(東京都の約3.6倍)以上の森林を管理しており、その手法は100%「ex-post(事後発行型)」である。つまり、実際に吸収・固定されたことが確認された後にのみクレジットが発行される仕組みだ。

AIとLiDARによる「デジタルツイン」で透明性を担保

IFMクレジットの課題は、過去に「ベースライン(プロジェクトがなかった場合の収穫量)」の過大評価が指摘されてきた点にある。この懸念に対し、オーセルは独自のデジタルMRV(計測・報告・検証)プラットフォーム「Dynamic Forest」を導入している。

  • 技術構成
    航空写真、LiDAR(光検出と測距)、およびAIを活用。
  • デジタルツイン
    すべての森林のデジタル複製を作成し、二酸化炭素(CO2)指標や森林活動をリアルタイムに近い形で追跡する。
  • 第三者認証
    ドイツの認証機関「TÜV」による監査を受け、透明性を極限まで高めている。

加速する欧州市場の要求と日本企業への影響

ゼンケンのアドリアン・ウォンズCEOは、「顧客は取締役会や監査人、そして規制当局に対して説明可能なポートフォリオを構築する必要がある」と述べている。欧州では、SBTiやCSRDの厳格化により、単なる排出回避型クレジットから、耐久性の高い除去型クレジットへのシフトが鮮明だ。

価格面では、IFMクレジットは安価な回避型クレジットと、1トンあたり数万円から数十万円に及ぶ高価な工学的除去(DAC等)の中間に位置する。100年以上の長期貯蔵が見込める高品質なIFMは、コスト効率の高い「ブリッジ・ソリューション」として、マイクロソフト等の大手テック企業からも数百万トン規模の先行購入(オフテイク契約)を引き出している。

今回の提携は、カーボンクレジット市場が「量から質」へ、そして「予測から実測」へと完全に移行したことを象徴している。特に、AIやLiDARを用いたデジタルMRVの標準化は、日本の森林クレジット(J-クレジット等)においても避けて通れない道となるだろう。

日本の中小企業や森林所有者にとっても、単なる「守るための森」を「収益を生む炭素貯蔵庫」へと変えるIFMの考え方は、地方創生の新たなモデルになり得る。欧州の厳格な基準に適合したクレジットが主流となる中、日本企業が国際的なサプライチェーンに残るためには、こうした「説明責任を果たせるクレジット」の選定眼が問われることになる。

参考:https://www.senken.io/academy/improved-forest-management-ifm