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鉄制約で海藻CDRの除去ポテンシャルが3分の1に縮小、海域の約20%では逆効果

2026.06.01 読了 約3分
鉄制約で海藻CDRの除去ポテンシャルが3分の1に縮小、海域の約20%では逆効果
出典:イメージ

海藻栽培による炭素除去(CDR)のポテンシャルは、鉄の制約と植物プランクトンとの栄養塩競合を織り込むと、従来の全球モデルの想定を大きく下回る。Nature Communications誌に受理された研究が示した。

窒素・リンの制約を考慮したうえで鉄制約を加えると、大規模栽培を支えうる海面の適地は約3分の1に縮小し、全海域の約20%ではCDRがむしろ逆効果になりうるという。

鉄制約が栽培適地を3分の1に縮小

研究チームは海洋生物地球化学モデルを用い、窒素・リン・鉄それぞれの需要と取り込み親和性が、海藻栽培の適地とCDR効率に与える影響を評価した。フランスのパリ高等師範学校(ENS)やスイスのベルン大学などが参加する。

従来の全球CDRモデルの多くは、硝酸・リン酸といった主要栄養塩の制約のみを扱い、微量栄養素である鉄の制約を見落としてきた。鉄は海藻の光合成や窒素同化に不可欠であると同時に、外洋の広い範囲で植物プランクトンの一次生産を律速している。

このため、海藻栽培に鉄を振り向けることは、海洋本来の生物学的炭素ポンプを損ないうる。窒素・リン制約を考慮したうえで鉄制約を加味すると、栽培適地は約3分の1へと縮小した。

栄養塩競合がもたらすネット負の除去

本研究は、海藻CDRの効果を、栽培を行わず一次生産を植物プランクトンが担う反実仮想と比較して評価する。海藻が単位栄養塩あたり植物プランクトンより多くの炭素を固定する場合にのみ、追加性が生じる。

逆に、海藻の栄養効率が植物プランクトンを下回れば追加性は失われ、栽培はネットで炭素除去量を減らす。実際、鉄を考慮した場合、全海域の約20%で海藻CDRは逆効果となった。

栄養需要と親和性の差は効率に大きな幅をもたらし、全球のCDR効率は-43%から+78%まで発散した。

推計の前提と限界

本研究は単一の海洋生物地球化学モデルに基づく推計であり、効率の発散幅そのものが、海域ごとの栄養塩動態に関する不確実性の大きさを映している。ネット負の除去も、海藻の栄養効率が植物プランクトンを下回る条件下で生じる結果である。

また、収穫した海藻を深海へ輸送・隔離する経路は、定量的な評価がいまだ確立していない。

編集部の視点

本研究は、海洋系CDRの実効性評価に除去量の不確実性という前提条件を突きつける研究として位置づけられる。

海藻CDRの方法論は、栽培量や沈降量を起点に除去量を積み上げる発想に傾きやすい。しかし鉄律速や植物プランクトンとの栄養塩競合という海域固有のフィードバックを織り込まなければ、算定された除去量が実除去量を上回り、測定・報告・検証(MRV)の信頼性そのものが揺らぐ。

ただし、これは単一モデルに基づく推計であり、効率がプラスに振れる海域も併存する。実効性の全面否定ではなく、海域選定と検証手法の精緻化を促す論点として読むのが妥当である。

海藻由来CDRのカーボンクレジットのバンカビリティは、栽培規模の拡大ではなく、海域ごとの栄養塩動態を組み込んだ除去量の検証をどこまで担保できるかが左右する。

参考:https://www.nature.com/articles/s41467-026-73168-z

関連タグ mCDR
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。