「サルガッサム危機」を気候資産に転換 英Seafields、海藻CDR事業で追加資金調達

村山 大翔

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英シーフィールズ(Seafields)は8月20日、カリブ海沿岸で深刻化するサルガッサム海藻の大量漂着問題を活用し、二酸化炭素除去(CDR)に結びつけるための新たなクラウドファンディングを開始した。募集は9月5日まで行われ、一般投資家も8.15ドル(約1,270円)から出資できる。

同社によると、独自の「シークリア(SeaClear)」と「シーグロウ(SeaGrow)」の両プラットフォームを大規模展開すれば、最大42ギガトンのCO2を大気から除去できる可能性がある。さらに、海藻由来のバイオ資材やバイオスティミュラント(植物活性剤)市場を開拓し、数十億ドル規模の「ブルーエコノミー」を形成する狙いだ。

シーフィールズは2025年3月末時点で390万ドル(約5億6,000万円)を助成金・株式・負債で確保済み。今回の資金調達ラウンドでは8月11日時点で140人以上の投資家から22万6,000ドル(約3,200万円)を集めた。

CEOのジョン・オークランド氏は「シークリアはサルガッサム由来製品の業界構造を一変させる。腐敗前に新鮮なまま保存できる唯一の仕組みであり、供給安定性と低排出の両面で優位性を持つ」と強調した。

サルガッサムは毎年数百万トン単位でカリブ海沿岸に漂着し、漁業・観光業に甚大な被害を与えてきた。シーフィールズは、独自設計の海上バリアで漂着前に海藻を回収し、特許技術「アルゲイポニクス(Algaeponix)」水槽に蓄える。これにより腐敗を防ぎ、化粧品・バイオプラスチック・持続可能包装材・バイオ炭などの製品原料として加工できる。

さらに、60基の水槽で構成するシーグロウ農場では、10年間で毎年約48万リットルのバイオスティミュラントを生産可能だ。同社は長期的に100以上の農場を展開し、サルガッサム問題の解決と同時に、カーボンクレジット市場向けの恒久的CO2除去を提供する計画である。

同社はすでにカリブ海リゾートとの提携交渉を進め、サルガッサム由来製品の初回オフテイク契約も締結済み。カンナビス種子販売大手シーズマン社との間では、天然植物活性剤供給の意向書を交わした。また、セントビンセント島ではOECS(東カリブ諸国機構)や世界銀行の支援を受けたパイロット事業を開始している。

シーフィールズは「廃棄物であったサルガッサムを、気候変動対策と地域経済発展を両立する資源に変える」と訴えており、クラウドファンディングの成否は、ブルーエコノミー型CDR事業の商業化に向けた試金石となる。

参考:https://www.crowdcube.com/companies/seafields-solutions-limited/pitches/qDD7Pq