台湾・台南市を拠点とする非営利枠組みの里山メイス・イニシアチブ(SMI)は2026年1月8日、生物多様性の保全と炭素吸収を両立させる6種の炭素クレジット算出手法を正式に承認し、運用を開始した。
国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)などが推進する「昆明・モントリオール生物多様性枠組(KMGBF)」に完全に準拠した世界初の体系的な手法であり、質の高い炭素除去(CDR)と生態系再生を同時に達成することを目指す。
今回の承認は、国際連合開発計画(UNDP)や日本の地球環境戦略研究機関(IGES)の専門家らによる厳格な審査を経て、52.9%という選別された採択率で決定された。
今回承認された手法は、有機廃棄物の資源化によるメタン排出回避や、土壌へのバイオ炭活用、農業施設内での作物による炭素捕捉、湿地および海草藻場の再生など、自然に依拠した解決策(NbS)に深く根ざしている。これらは台南に設置された「里山カーボンクレジット地域創生拠点」を通じて管理され、特に開発途上国や小島嶼開発途上国(SIDS)での適用を想定して設計された。
国立成功大学(NCKU)の陳維聖(Wei-Sheng Chen)教授は「これらの手法は、生物多様性の保全、生態系の回復、そして公平な利益配分を統合した気候変動対策を具現化する重要な一歩だ」と述べ、厳格な測定・報告・検証(MRV)プロトコルを通じて、社会生態学的生産景観(SEPLS)における透明性の高い炭素会計が可能になると指摘した。
SMIの枠組みは、クリーン開発メカニズム(CDM)やクライメート・アクション・リザーブ(CAR)のプロトコルに沿って開発されており、衛星データやテレメトリー、機械学習を統合した「システム・オブ・システムズMRV」を導入している。これにより、プロジェクト間での重複計上を防ぎつつ、土壌炭素貯蔵量や温室効果ガス(GHG)フラックスの正確な測定を可能にしている。
台湾では2026年5月から国内独自の炭素賦課金制度が開始される予定であり、環境部(MOENV)も2025年初頭に農業分野の炭素吸収手法を承認している。しかし、SMIの手法はより「生物多様性中心」であることを強調しており、国際市場における「プレミアム・クレジット」としての価値創出を狙う。今後はこれら手法に基づいたプロジェクトが、アジア太平洋地域を中心に順次展開される見通しだ。
今回のSMIによる手法公開は、カーボンクレジット市場が「単なる排出削減」から「生物多様性の回復を伴う高品質な除去」へと明確にシフトしていることを示している。
特に日本のIGESが審査に関与している点は、日本の「里山」概念が国際的な炭素市場のスタンダードに組み込まれつつあることを意味しており、国内の農林水産関連企業にとっても、生物多様性オフセットとカーボンクレジットを組み合わせた新たな事業モデルの指針となるだろう。


