SAPが37,000トンのカーボンクレジット契約、CO2除去に数十億円投資 Climeworksとの複合CDR契約

村山 大翔

村山 大翔

「SAPが37,000トンのカーボンクレジット契約、CO2除去に数十億円投資 Climeworksとの複合CDR契約」のアイキャッチ画像

ソフトウエア大手SAPは17日、スイスの気候テック企業Climeworksと複数年にわたる炭素除去(CDR)協定を締結した。総額は数百万ユーロ(数十億円)規模とみられ、2034年までに計37,000トンの高品質カーボンクレジットを確保する。両社は併せて企業向けCO2管理ツールを共同開発し、SAPの基幹システムへ統合する計画だ。

SAPはScience Based Targets initiative(SBTi)の「コーポレート・ネットゼロ基準」に沿い、DAC(直接空気回収)、バイオ炭、岩石風化促進(Enhanced Rock Weathering,ERW)を組み合わせたポートフォリオに資金を振り向ける。

クレジットは1トン当たり数百ユーロとされ、契約総額は数十億円規模と推定される。

SAPのサステナビリティ最高責任者兼商務責任者、ソフィア・メンデルソン氏は「投資は高い整合性を持つ容量を好条件で確保し、価格変動リスクを回避する」と述べ、製品開発面でも顧客や規制の要請に応える経済的強化策と位置付けた。

Climeworks共同創業者兼共同CEOのクリストフ・ゲバルド氏は「CDRを企業テクノロジーに組み込み、世界の事業者が容易に行動できるようにする」と強調し、サプライチェーン全体のレジリエンス向上を訴えた。

協定の第1段階では、SAPがClimeworksのDAC設備を含む多様な除去技術に前払いする一方、両社は「SAP Sustainability Control Tower」や「SAP Store」を活用したERP起点のCDR管理モジュールを共同設計する。これにより企業は自社排出量の測定、削減、除去を一画面で把握し、価格や技術リスクを分散したポートフォリオを持続的に運用できる。

背景には、欧州企業で進む削減+除去の二段構えがある。SAPは23年にスコープ1,2排出を2010年比で90%削減し、残余分を高品質CDRで相殺する方針を公表。Climeworksも同年、DACの消費電力を50%削減した第3世代設備を発表し、1メガトン規模への拡張を目指す。両社の提携は、長期クレジットの値上がり懸念に備えつつ、標準化が遅れるCDR会計の実装モデルを提示する狙いがある。

今後は26年までに試験モジュールをSAP顧客の一部に実装し、30年までの本格普及を視野に置く。SBTiは35年時点で「年間4億トン超」の除去需要を試算しており、企業ニーズの高まりは早期導入組への優位性をもたらす。ClimeworksとSAPは25年末までに技術仕様と料金体系を公表する予定だ。

参考:https://climeworks.com/press-release/sap-and-climeworks-forge-an-alliance-for-carbon-drawdown