米IT大手のSalesforceが1.2万トンのカーボンクレジットを先行購入 耐久性CO2除去の商用化を加速

村山 大翔

村山 大翔

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米IT大手のセールスフォース(Salesforce)と、環境プラットフォームを運営するスウェーデンのミルキーワイア(Milkywire)は2026年1月10日、世界15カ国19社のサプライヤーから、合計1万2,500トンを超える耐久性炭素除去(CDR)カーボンクレジットの先行購入契約を締結したと発表した。

この取り組みは、セールスフォースが「ファースト・ムーバーズ・コアリション(FMC:First Movers Coalition)」の創設メンバーとして掲げた、2030年までに1億ドル(約150億円)を耐久性CDRに投じるという公約の一環である。市場が未成熟な初期段階の技術に対して早期の資金を供給することで、商業化の障壁となっている「死の谷」の克服を支援する狙いがある。

今回のポートフォリオは、次世代の直接空気回収(DAC)やバイオ炭、強化風化、鉱物化など6つの異なる炭素除去手法を網羅している。先行購入を通じて、まだ大規模な買い手がついていない革新的な技術のスケールアップを後押しする。セールスフォースは2024年12月にもミルキーワイアの「気候変革基金(Climate Transformation Fund)」へ約500万ドル(約7億5,000万円)を拠出しており、今回の契約はその継続的な支援を具体化させたものとなる。

サプライヤー別の配分では、熱帯林管理とバイオマス貯蔵を手掛けるインターホルコ(Interholco AG)が約2,000トンと最大規模を占めた。次いで、ナミビアなどでコミュニティ主導のバイオ炭プロジェクトを展開するパイロCCS(PyroCCS GmbH)が約1,350トン、回収した炭素を安定した固体に変換する鉱物化技術を持つカーボンセート(Carbonsate)が約1,300トンと続く。

これらのプロジェクトは、CDRだけでなく、土壌の健康改善や廃棄物管理、現地の雇用創出といったコベネフィットも重視されている。

ミルキーワイアの気候戦略・CDR責任者であるロバート・ホーグランド氏は、「CDRのスケールアップは、今日存在するトン数を買うことだけではなく、明日必要となる技術とエコシステムを可能にすることだ。不確実性や学習、そして初号機の展開を支援する買い手の姿勢が、将来の供給体制を築く」と述べた。

また、セールスフォースの気候・エネルギー担当ディレクターのジャミラ・ヤマニ氏は、「気候変動に対処するためには、技術が完全に証明される前に投資を行う必要がある。ミルキーワイアとの提携を通じて、CDRをコンセプトから商業的現実に近づけていく」と指摘した。

市場予測によれば、企業のネットゼロ戦略が従来の排出回避(オフセット)から永久的な除去へとシフトする中で、耐久性CDR市場は今後10年間で数十億ドル規模に成長する可能性がある。一方で、多くの新興技術の確立には厳格な検証と長期的な支援が不可欠とされる。

今回の発表に合わせ、ミルキーワイアは2026年1月12日から新たなCDR提案募集を開始した。募集は「未検証の革新的アイデア(Discovery)」「実証段階の加速(Scale-up)」「成熟した供給(Mature)」の3カテゴリーで行われ、2026年中に追加の先行購入を実施する予定だ。

今回のセールスフォースによる先行購入は、単なる「クレジットの調達」ではなく、市場そのものを創出する「触媒的投資」としての性格が極めて強いニュースです。現在、多くのCDRスタートアップが技術実証には成功しながらも、量産化に向けた資金調達に苦しむ「死の谷」に直面しています。

日本企業にとっても、2026年1月12日から開始された「カテゴリーA(Discovery)」や「カテゴリーB(Scale-up)」の公募は、世界のトップティアの買い手(セールスフォース等)と接点を持つ大きなチャンスとなります。特に日本が得意とする素材技術やエンジニアリングを、いかに「耐久性のある炭素除去」という国際的な評価軸に乗せるかが、今後のグローバル市場での成否を分けるでしょう。

参考:https://www.milkywire.com/articles/milkywire-completes-pre-purchases

参考:https://www.milkywire.com/articles/open-call