欧州金融大手のロスチャイルド・アンド・コー(Rothschild & Co)は、英国の炭素除去(CDR)および炭素ネガティブ建設資材の専門企業であるO.C.Oテクノロジー(O.C.O Technology)と、3年間のCDRクレジット購入に関するオフテイク契約を締結した。
同社が特許を持つ「加速炭酸化技術(ACT)」を活用し、産業廃棄物にCO2を固定化して建設資材へと転換するプロセスから生成される、高品質なCDRクレジットを取得する。
今回の提携は、ロスチャイルド・アンド・コーが掲げる「2030年までにカーボン・オフセット・ポートフォリオの100%を除去由来にする」という戦略的目標の一環だ。従来の排出回避系クレジットから、大気中から直接またはプロセスを通じてCO2を取り除く「除去型」への完全移行を目指す同グループにとって、科学的根拠に基づいた耐久性の高いソリューションの確保は急務となっていた。
O.C.Oテクノロジーが20年以上の研究を経て商用化した「加速炭酸化技術(ACT)」は、自然界で数百年を要する鉱物化プロセスを人工的に加速させるものだ。
現在、同社は英国国内で3つの工場を運営しており、今回のロスチャイルドとの長期契約により、英国内およびグローバルでの事業拡大と生産能力の増強を加速させる。
本契約は、気候変動対策プラットフォームであるパッチ(Patch)の仲介により実現した。ロスチャイルド・アンド・コーのサステナビリティ部門責任者であるアン・インバッハ(Anne Imbach)氏は、「このパートナーシップは、測定可能で検証可能な気候利益をもたらす、誠実性の高い炭素除去ソリューションを支援するという当社の長期的なコミットメントを強化するものだ」と述べた。
また、O.C.Oテクノロジーのスティーブン・ロスコー(Stephen Roscoe)取締役は、「このような長期提携は、ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)の成熟を示している。我々の技術が、排出量削減と気候変動対策の信頼できる構成要素として認識されつつある証拠だ」と評価している。
今回の事例は、金融機関が「単なるオフセット」から「技術への先行投資」へと舵を切っている象徴的な動きである。特に、産業廃棄物の処理と炭素除去を組み合わせた「鉱物化」モデルは、土地制約が厳しく廃棄物処理コストが高い日本の中小・中堅建設会社や産廃業者にとっても、新たな収益源(クレジット創出)と脱炭素化を両立させる極めて現実的なビジネスモデルになり得る。
2030年に向けたCDRクレジットの争奪戦は、既に始まっている。
