仏カーボンクレジットスタートアップRiverse、シードラウンドで8億円の資金調達

村山 大翔

村山 大翔

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「意味のある」カーボンクレジットマーケットの拡大へ

カーボンクレジットの認証プラットフォームを運営するフランスのRiverseは2025年5月、約8億円(500万ユーロ)のシードラウンド資金調達を実施したと発表した。主導したのはAlvenとSerena×Makesenseが管理するインパクトファンド「Racine²」で、SpeedInvestおよびKfundも参加した。

今回の資金は、これまでに構築した認証プラットフォームと「Riverse Standard」をスケールさせるために使用される。Riverseは、工業的手法やテクノロジーを活用したエンジニアドカーボンクレジットに特化し、企業が地理的・産業的に「意味のある」形で排出量を補填できる仕組みの提供を目指している。

信頼できてRelevantなクレジットが不足

Riverseは、現在のボランタリーカーボンマーケット(VCM)は、科学的に信頼できる一方で、企業活動との関連性が薄いという問題に直面していると主張している。

CEOのリュドヴィック・シャトゥ氏は「我々が目指すのは、科学的に厳密で、かつ企業にとって実務的な価値があるカーボンクレジット」と述べており、同社の標準はISO 14064-2に準拠し、プロジェクトごとの定量的なデータに基づいて発行されている。

すでに60件以上のプロジェクトを認証し、25万トン以上のカーボンクレジットを発行。分野はIT機器リユース、バイオ炭、バイオベース建材、岩石風化、バイオマスCDRなど多岐にわたる。これらすべてに対して、第三者検証・定量データ・透明性のあるレジストリ管理を実装している。

信頼性だけでなく事業との「関連性」に価値を

Riverseの強みは、高い信頼性を備えたクレジットを提供するだけでなく、企業の地域性・事業内容・サプライチェーンと直接結びつく「関連性のあるプロジェクト」を提案できる点にある。実際に、以下のような多様な企業が、自社の脱炭素戦略と親和性の高いプロジェクトをRiverseを通じて選択している。

  • Bouygues S.A.(フランス大手建設・エネルギーグループ)
    事業領域に近いIT機器リユース(Recommerce)やバイオガス発電(ENJ2A)のプロジェクトからクレジットを購入。環境配慮とサーキュラーエコノミーの両立を図る。
  • BNPパリバ(フランス大手金融機関)
    炭素取引において、顧客向けのクレジット商品としてRiverse標準を採用。信頼性の高いソリューションを提供。
  • AG(ベルギーの不動産・保険グループ)
     建材分野におけるCO2除去と事業の親和性を考慮し、ヘンプ建材(IsoHemp)のCDRクレジットを購入。

認証プロセスは通常3か月以内に完了し、モジュール型モデルと現場データ、第三者検証の組み合わせで迅速かつ正確な発行を可能としている。

「実用性のある気候貢献クレジット」へのシフトを牽引

Riverseは、気候関連財務情報の透明性向上や法規制強化が進む中で、「企業にとって実効性のあるカーボンクレジット」が今後主流になると見ている。今回の資金調達を機に、同社はさらに多くのプロジェクト認証と新市場への展開を進め、VCMの信頼性と成長性の両立を目指すとしている。

参照:https://www.riverse.io/blog/carbon-credits-built-for-business-our-eu5m-seed-round