オフセット上限を50%に拡大 メキシコ・ケレタロ州が「炭素税の新指針」を公表

村山 大翔

村山 大翔

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メキシコのケレタロ州持続可能開発局(SEDUSU)は2025年12月26日、2025年分以降の納税に適用するカーボンオフセット制度の新たなガイドラインを公表した。

同州は企業に課す炭素税に対し、認定カーボンクレジットによる相殺上限を従来の20%から50%へ大幅に引き上げる方針を決定した。この措置により、域内における排出削減プロジェクトへの投資を促し、地方政府主導の炭素市場を強化する。

今回の改定では、税控除を受けるための前提条件として「州低炭素排出シール(Sello Estatal de Bajas Emisiones de Carbono)」の取得を義務付けた。2月末までに納税した場合は20%、4月末までは10%の税割引が適用されるが、これには同シールの保有が必須となる。州政府は税制上の優遇措置を提示することで、産業界に対して早期の排出管理とクレジット活用を促す狙いだ。

オフセットに使用できるクレジットは、2020年以降に発行された「ヴィンテージ」に限定される。認証基準については、ベラ(Verra)やゴールド・スタンダード(Gold Standard)、気候アクション・リザーブ(CAR)、国際連合のクリーン開発メカニズム(CDM)などが対象となる。州政府はクレジットの質を国際水準に合わせることで、市場の透明性と信頼性を担保する姿勢を鮮明にしている。

自然由来の解決策(NbS)によるオフセットについては、使用するクレジットの少なくとも25%をケレタロ州内のプロジェクトから調達することを求めた。また、技術ベースの炭素除去(CDR)についても、州内、国内、国際プロジェクトの順で優先順位を設定している。この優先規定は、炭素除去技術への投資を州内に呼び込むための戦略的な産業政策としての側面が強い。

2026年度の炭素税率は、1二酸化炭素換算トン(tCO2e)あたり690.32メキシコ・ペソ(約5,860円)に設定された。これは米ドル換算で約6.55ドル(約980円)に相当し、インフレ率に応じて今後も調整される。企業にとっては、税を直接納めるよりも安価なクレジットを調達して相殺する方が経済的メリットが大きくなるよう設計されている。

州政府は今後、認定プロセスの詳細や対象プロジェクトの登録手順を順次公開する。ケレタロ州の事例は、国単位のカーボン市場とは別に、地方自治体が独自に排出規制とオフセット市場を構築する先駆的なモデルとして注目されている。

ケレタロ州の今回の決定で特筆すべきは、オフセット上限を50%という極めて高い水準に設定した点である。通常、各国の炭素税制度における相殺上限は5〜10%程度に抑制されることが多いが、あえてこれを引き上げた背景には、州内への資金流入を最大化したいという強い意図が透けて見える。

特に「NbSの25%は州内から」という地産地消のルールは、地方政府がクレジット需要を人為的に創出し、域内の自然保護や農林業への投資を呼び込む強力なツールとなる。日本においても、J-クレジットの活用を条例で義務化する自治体が増えれば、地域経済の活性化と脱炭素を両立させる同様のスキームが加速するだろう。

参考:https://vlex.com.mx/vid/acuerdo-emiten-lineamientos-obtener-1099346798