米国のSTAXエンジニアリング(STAX)は、英国の脱炭素プロジェクト「PortZero(ポートゼロ)」に参画し、英国政府から約110万ポンド(約2億1,000万円)の助成金を獲得した。欧州で初めて、港で係留中の船舶から直接排出ガスを回収・処理する実証事業がスタートする。
このプロジェクトは、英国運輸省による「クリーン海運実証コンペティション(CMDC)」の第6回で採択されたもので、Seabound(シーボウンド)、英国最大の港湾運営会社ABP(Associated British Ports)、船会社のLomar Shipping(ロマー・シッピング)と連携して進められる。
STAXの技術は、船の排気を特殊なバージ(作業船)で吸引し、微粒子(PM)を99%、窒素酸化物(NOx)を95%除去する。これにSeaboundの炭素回収装置を組み合わせることで、二酸化炭素(CO2)を95%、硫黄酸化物(SOx)を90%まで削減できるという。
STAXのマイク・ウォーカーCEOは、「高額な設備投資や船の改造なしに、港の排出削減がすぐに実現できる。クリーンな空気を待つ必要はない」と語った。
欧州では、陸上から電力を供給する「岸電」設備の整備が遅れており、EUが求める整備水準のうち、実際の整備率は約20%にとどまっている。PortZeroは、その代替となる「すぐに使える脱炭素技術」として注目を集めている。
このプロジェクトは、英国の脱炭素海運施策「UK SHORE(Shipping Office for Reducing Emissions)」の一環で、CMDC第6回では計3,000万ポンド(約53億円)が71件のプロジェクトに分配された。
ABPのマックス・ハリス戦略・サステナビリティ部長は「この新しい技術で港の空気をさらにきれいにし、脱炭素の流れを加速させたい」と述べた。
PortZeroは2025年4月に行われた実演イベント「カーボンキャプチャー・ショーケース」で初披露されており、今回の助成により本格的な実証に移行する。今後、欧州内外の他の港にも技術が展開される可能性がある。
参考:https://www.staxengineering.com/stax-hub/stax-engineering-builds-uk-momentum/