ポーランド中南部のキェルツェ市は9月4日、ワルシャワのクライメートテック企業オラクエル(Oraquel S.A.)と共同で、同国初となる直接空気回収(DAC)施設の建設に着手すると発表した。年内の稼働を予定し、年間500トンのCO2を大気から除去できる見込みだ。
本プロジェクトは市庁舎で署名された協定に基づき進められる。電力はすべて太陽光発電でまかなわれ、運転時に追加の排出を生じない仕組みとなる。捕集したCO2はオラクエル社の特許フィルターに吸着させ、交換可能な形で回収する。最終的には旧鉱山の坑道に貯留する計画で、コスト低減も見込まれている。
キェルツェ市のアガタ・ヴォイダ市長は「新技術の効果を示すことで、都市が環境・気候変動にどう適応するかを市民に伝え、キェルツェを緑豊かで住みやすい街にし続けたい」と述べた。教育的意義が大きいことを強調し、市民参加型の気候行動につなげる考えを示した。
オラクエル社のヴォイチェフ・ムディナ最高経営責任者(CEO)は「当社の安定したDAC技術はCO2の輸送・貯留を容易にする。今回の導入はポーランド全土での拡大に向けた第一歩だ」と説明した。同社はギガトン規模の炭素除去を目標に掲げており、複数都市への展開を視野に入れている。
同施設の年間除去量は、石炭ストーブを利用する約70世帯の排出や、10年落ちディーゼル車が約250万キロ走行した際の排出に相当する。欧州でのカーボンクレジット市場拡大やEUのカーボンリムーバル認証制度(CRC)を見据え、同国におけるDACの普及と商用化に向けた重要な実証となりそうだ。
今後は稼働開始後の運転データが、ポーランド国内でのDAC拡張やEU域内の排出量取引制度(ETS)との統合に向けた検証材料となる。
参考:https://www.oraquel.com/pilot-installation-for-absorbing-co2-from-the-air-in-poland