「欧州森林カーボンクレジットの新基準」 Pina EarthとTree.lyが合併 地域密着型の炭素除去で業界最大手に

村山 大翔

村山 大翔

「「欧州森林カーボンクレジットの新基準」 Pina EarthとTree.lyが合併 地域密着型の炭素除去で業界最大手に」のアイキャッチ画像

ドイツのピナ・アース(Pina Earth)とオーストリアのツリー・リー(Tree.ly)が合併し、欧州初の「フルスタック型」森林カーボンプラットフォームが誕生した。この合併により、欧州6カ国で8万ヘクタール以上の森林を対象に、累計50万トン超のカーボンクレジットを発行する体制が整い、同分野では地域最大規模となる。

新会社は、森林所有者と企業をつなぐ中立的な橋渡し役として機能し、森林保全を通じた信頼性の高いカーボンクレジットを提供する。企業側は、地域発の生物多様性にも配慮されたクレジットを取得でき、森林所有者は、認証や販売の手続きを一本化できる。

ピナ・アースが持つ森林シミュレーション技術は、ツリー・リーの認証システムに統合され、プロジェクトの効率と透明性を高める。対応可能な手法も森林管理の改善(IFM)や植林(ARR)、保全、適応など多岐にわたり、小規模な森林所有者も参加しやすくなる。

経営はツリー・リーの共同創業者、ヨドク・バットログ氏とクリスチャン・ルッツ氏が担い、ピナ・アースの創業者であるゲザ・ビアマン博士とフロリアン・フィンケ氏は、戦略顧問として引き続き関与する。今後はシリーズAの資金調達や、欧州全域での展開拡大を見据えている。

出資元のエックス・アンジュ(XAnge)のナジャ・ブレスアス・メヒガン氏は「この合併は、欧州の森林カーボン市場にとって決定的な転機になる」と語った。

背景には、気候変動の影響で森林の保全と再生が急務となる中、信頼性の高い自然由来の炭素除去(CDR)へのニーズが高まっていることがある。欧州委員会が進める「炭素除去認証枠組み(CRCF)」など新たな制度整備も追い風となり、業界の再編が進んでいる。

今後は、ミュンヘン、ベルリン、ドルンビルンの拠点を中心に、テクノロジー強化と商圏拡大を進め、地域起点での森林CDRプロジェクトを一層加速させる構えだ。

参考:https://www.pina.earth/en-blog-posts/pina-earth-and-tree-ly-merge-to-build-europes-leading-tech-enabled-forest-carbon-platform