フィリピンのエネルギー省(DOE)は9月23日付で、エネルギー部門におけるカーボンクレジット創出と取引の一般的枠組みを定めた「省令第DC2025-09-0018号」を公布した。10月10日に官報で公表されたこの新制度は、排出削減の実効性と透明性を担保しつつ、国内の再生可能エネルギー投資と国際的なカーボン市場参画を加速させることを目的としている。
同省令は、「カーボンクレジットの生成、管理、監視に関する一般指針」と題され、エネルギー分野の民間事業者がカーボンファイナンスを活用するための基盤政策として位置づけられる。エネルギー相シャロン・S・ガリン氏が署名したもので、温室効果ガス排出削減を実質的かつ検証可能な形で実現することを重視している。
この制度の中核をなすのが、1トンの二酸化炭素換算(tCO2-e)削減を単位とする「カーボンクレジット証書(Carbon Credit Certificate:CCC)」である。CCCは国家指定機関の認証を経て、国際的な削減成果(Internationally Transferred Mitigation Outcome:ITMO)として他国や企業に移転可能となる。国際民間航空機関(ICAO)のCORSIAや、各国の排出権市場との整合性も視野に入れている。
制度運営は、エネルギーカーボンクレジット作業部会(Task Force on Energy Carbon Credits:TFECC)が統括し、プロジェクトの排出削減量が「実在し、測定可能で、検証可能」であることを確保する。これにより二重計上を防止し、カーボンクレジットの所有権・使用・移転ルールを明確化する。
さらに同国は、シンガポール、日本、欧州諸国との間で二国間・多国間のクレジット取引を推進する方針を示した。これにより、パリ協定第6条に準拠した高品質クレジットの共同開発や市場設計に関する知見共有を進める狙いだ。
ガリン氏は声明で「本指針はエネルギー部門の脱炭素化を加速させ、気候変動対策と持続可能な開発の両立を実現するための重要な一歩である」と述べた。同政策は「フィリピン・エネルギー計画(PEP)2023–2050」における低炭素エネルギー転換の中核施策として位置づけられている。
フィリピンは地熱・水力・太陽光など豊富な再生可能資源を活かし、クリーンエネルギー投資の拡大を通じて、パリ協定が掲げる「世界の気温上昇を2度未満に抑える」目標達成に貢献する考えだ。今後は、CCCの認証手続きや国際連携の具体化が焦点となる。