沿岸バイオ施設のCO2を「海洋貯留」へ pHathomが18億円の資金確保

村山 大翔

村山 大翔

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カナダの気候テック企業であるファゾム・テクノロジーズ(pHathom Technologies)は2026年2月5日、シード資金調達ラウンドを完了し、累計の確保資金が1,200万ドル(約18億2,400万円)に達したと発表した。

同社は沿岸のバイオエネルギー施設や工場から排出されるCO2を回収し、海水中で安定する「溶存無機炭素」として貯留する独自技術を開発している。

今回の資金は、既存の産業インフラを活用した検証可能な炭素除去(CDR)のパイロットプロジェクト推進に充てられる。

ファゾム社の技術は、沿岸の施設で回収したバイオ由来のCO2を、陸上の反応炉で海水や石灰石と混合し、天然の海水にも含まれる重炭酸塩などの安定した形態に変換するものである。処理された海水は、自然な炭素循環を乱すことなく現地の海洋環境に戻される。この手法は、従来の炭素回収・貯留(CCS)で課題となっていた長距離の輸送パイプラインや、地下深くへの圧入を必要としない点が最大の特徴だ。

今回の400万ドル(約6億800万円)のエクイティ調達は、プロペラ・ベンチャーズ(Propeller Ventures)が主導し、ニューブランズウィック・イノベーション財団(NBIF:New Brunswick Innovation Foundation)やカルミューズ・ベンチャーズ(Carmeuse Ventures)などが参加した。これに、カナダ・オーシャン・スーパークラスター(OSC:Canada’s Ocean Supercluster)を通じて進めている1,600万ドル(約24億3,200万円)規模のバイオエネルギー炭素回収・海洋貯留プロジェクトを加え、同社の累計資金は1,200万ドルを超えた。

ファゾム・テクノロジーズ(pHathom Technologies)のキンバリー・ギルバート(Kimberly Gilbert)最高経営責任者(CEO)は「大規模施設からの排出削減は、その解決策が永続的かつ検証可能、そして責任あるものでなければ十分ではない」と指摘した。その上で、既存のインフラ内で機能し、確立された規制枠組みで管理可能な炭素除去の経路を実証する意向を示した。

市場からの期待も高く、同社はストライプ(Stripe)やグーグル(Google)などが主導する炭素除去の先行購入枠組み「フロンティア(Frontier)」の提供先にも選出されている。

今後は、バイオエネルギー施設における排出量の実質的な削減を目指し、科学的なモニタリングと規制当局との連携を強化しながら、2026年後半にかけて技術の商用化に向けた検証を進める計画である。

本件は、従来の「地下貯留(CCS)」に代わる、低コストな「海洋CDR」の台頭を象徴している。従来のCCSは、適した地質構造を持つ場所までCO2を運ぶための巨大なパイプライン投資がネックとなり、中小規模の排出源や地方のバイオマス施設には導入が困難だった。

ファゾム社の「パイプライン不要」というアプローチは、既存の沿岸インフラをそのまま炭素除去の拠点に変えられるため、分散型エネルギー源との相性が極めて良い。

日本でも沿岸部の工場や発電所は多く、地質学的な貯留地が限られる国内環境において、この「既存インフラ×海洋貯留」のモデルは、将来的に有力な炭素クレジット創出手段となる可能性がある。

参考:https://www.businesswire.com/news/home/20260205623605/en/pHathom-Technologies-Surpasses-%2412M-Committed-Capital-with-Closure-of-Seed-Financing-Round