マレーシアの国営エネルギー企業CEO「CO2回収は主要収益源」 エナジーアジア会議 

村山 大翔

村山 大翔

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マレーシアの国営エネルギー会社PETRONASのタン・スリ・テンク・ムハンマド・タウフィク社長兼最高経営責任者(CEO)は16日、クアラルンプールで開かれたエナジーアジア会議で「炭素回収・貯留(CCS)を将来の主要収益源に育てる」と語った。CCS関連インフラの整備と並行し、同社は液化天然ガス(LNG)輸入受入体制の構築も進める方針だ。

マレーシア政府は国際水準と整合させたCCUS課金制度を導入する方針で、3月に初読された「CCUS法案」は今会期中に二読が予定される。課金水準を巡る詳細は未定だが、制度化によりプロジェクト認可の透明性が高まる見通しである。

また、PETRONASとメルセデスAMG・PETRONAS F1チームは13日、ブルーカーボン・コレクティブを設立すると発表した。同取り組みはマレーシアとブラジルの研究機関が協力し、マングローブ生態系における炭素固定の実証を5年間で進める。

「ブルーカーボンの科学的知見を拡充し、気候変動リスクを低減する鍵にしたい」とタウフィクCEOは強調した。メルセデスF1のトト・ヴォルフ代表も「南南協力による先端研究が自然に基づく解決策を後押しする」と述べた。

計画ではジョホール州のスンガイ・サンティ森林保護区に10万本のマングローブを植樹し、すでに2万本が定着した。研究データは土壌炭素量や生態系健全度といった指標を比較分析し、世界的な炭素動態モデルの構築に活用される。

PETRONASは同フォーラムで初の自然・資源効率目標を公表した。2030年までに国内水ストレス地域で淡水取水量を14%削減し、危険廃棄物の循環利用率を82%に引き上げる。また既存操業拠点で「生物多様性ネットロスなし」を掲げ、2030年以降は保護区での生息地面積を維持する方針だ。

マレーシアのCCUS法案は第二読後、上院審議と国王裁可を経て早ければ年内にも成立する見込みで、課金率や監督体制の詳細が焦点となる。ブルーカーボン・コレクティブの研究成果は2030年にかけて順次公開予定で、同国の低炭素技術ロードマップと整合しながら政策形成に反映される見通しだ。

参考:https://www.petronas.com/media/media-releases/petronas-and-mercedes-amg-petronas-f1-team-collaborate-advancing-research