カーボンクレジットの測定・モニタリング・報告・検証(MMRV)技術を提供する米国のペレニアル(Perennial)と、炭素市場アドバイザリーのヴァロール・カーボン(Valor Carbon)は、土壌からの炭素除去(CDR)プロジェクトの世界的な展開を加速するため、戦略的提携を発表した。
この提携は、特に中央アジア地域を最初のターゲットとし、再生農業や再生放牧を導入するプロジェクト開発者に対し、資金調達と高精度なMMRVインフラへのアクセスを容易に提供することを目的としている。両社は協働することで、再生農業プロジェクトの規模拡大を阻む最大の課題である資金調達の障壁を解消し、カーボンクレジット市場の信頼性向上に貢献する構えだ。
提携の核心、資金調達と高精度MMRVの融合
PerennialとValor Carbonの提携の軸は、それぞれの強みを組み合わせる点にある。
Perennialの役割
スケーラブルで費用効率の高い、レジストリ(登録機関)に準拠したMMRV技術を提供する。これは、土壌有機炭素の定量化のための認証機関ベラ(Verra)の新しいデジタル土壌マッピングツール「VT0014」の主要開発者であるという専門知識に基づいている。
Valor Carbonの役割
プロジェクト設計、仲介、地域ネットワークの専門知識を提供し、プロジェクト開発者に対して資金調達とオフテイク(将来のクレジット購入)経路を確保する。
Perennialの共同創業者兼CEOであるジャック・ロズウェル氏は、「再生農業と再生放牧プロジェクトの規模拡大を妨げる最大の障害は、プロジェクトの資金調達だ。当社のエンドツーエンドのMMRVと、Valorの資金調達およびオフテイク経路を確保する能力を組み合わせることで、開発者が農家や牧場主の土地回復支援という本質に集中できるようになる」と述べ、資金調達支援が提携の決定的な鍵であると強調した。
中央アジアで最初のプロジェクトが始動
この提携の下で、すでに中央アジアを舞台とする2つのパイロットプロジェクトが選定され、支援が開始されている。これらは、国際的な炭素クレジット認証機関であるベラの既存の認証方法論を活用し、高精度なソイルカーボン定量化を実証する。
- カザフスタン大草原再生プロジェクト
- プロジェクト開発者rTekが主導。
- ベラの方法論「VM0032」に準拠し、50万ヘクタル以上の劣化した放牧地の再生に焦点を当てる。
- アシール農場再生農業プロジェクト
- Valor Carbonが開発。
- ベラの方法論「VM0042」の下で、10万ヘクタールの農地を再生的な慣行へと移行することを目指す。
- このプロジェクトは、ドイツ政府の委託を受けて実施されている地域プログラム「中央アジアにおける気候リスク管理」の一環で、英国国際開発局から資金提供を受けた小規模グラント・気候イノベーションファシリティ(SGCIF)からの支援を受けている。
両プロジェクトでは、Perennialが主導開発したVerraの新しいデジタル土壌マッピングツール「VT0014」が活用される。これにより、放牧地と農地の両方で、厳格で標準化された影響測定が確保され、土壌カーボンクレジットの信頼性が飛躍的に向上することが期待される。
今後の展望、高品位クレジット市場の形成
この提携は、農家や牧場主に過剰なサンプリング負担をかけることなく、正確でレジストリ対応可能な測定データを提供するものであり、高品位(ハイ・インテグリティ)なソイルカーボンクレジット市場の形成に向けた重要な一歩となる。Valor Carbonの共同創業者兼CEOであるロッコ・ヒューシュ氏は、「Perennialとの提携により、どこであれ、当社が開発または仲介するプロジェクトにクラス最高のMMRVをもたらすことができる」と述べ、測定の正確性が国際的なカーボンクレジットの取引を後押しすることを示唆した。
参考:https://www.perennial.earth/post/valor-partnership-to-advance-regenerative-carbon-projects