英バイオ炭技術企業のオヌ(Onnu)と、サステナビリティ事業開発を行うリジェンアース(ReGenEarth)は12月9日、英国セッジフィールドの酪農場で、嫌気性消化(AD)施設と熱分解(パイロリシス)設備を統合した画期的な「完全循環型」炭素除去プロジェクトを開始すると発表した。既存のバイオガス発電インフラにオヌの独自技術を組み込むことで、年間4,300トンの二酸化炭素(CO2)除去カーボンクレジットの創出と、農業残渣の完全資源化を目指す。
湿潤バイオマスの課題を解決する「熱エネルギーの循環」
本プロジェクトの最大の特徴は、従来は処理が難しかった「消化液(Digestate)」を、熱分解プロセスの廃熱を利用して乾燥させ、バイオ炭の原料として再利用する点にある。
建設予定地であるホープ農場(アーラ・フーズに生乳を供給する稼働中の酪農場)では、以下の循環プロセスが導入される。
- 嫌気性消化(AD)
農業残渣や家畜排泄物を発酵させ、バイオガスを生成。 - 熱利用による乾燥
熱分解装置から生じる再生可能熱エネルギー(廃熱)を用い、ADの副産物である湿った消化液を乾燥させる。 - バイオ炭の生成
乾燥した消化液をオヌの熱分解装置「CarboFlow」に投入し、土壌改良効果のあるバイオ炭へと変換する。これにより炭素を固定化する。
このプロセスにより、外部エネルギーに依存せず、廃棄物を価値あるCDRクレジットとエネルギー資源に変える「閉鎖系ループ」が完成する。
年間4,300トンのCDRとPuro.earth認証
オヌは同農場に2基の「CarboFlow」ユニットを配備する計画だ。フル稼働時には以下の成果が見込まれている。
炭素除去量は、年間4,300トン(CO2換算)。これらはPuro.earth(ピュロ・アース)の認証枠組みの下でカーボンクレジット化される予定である。バイオ炭生産量は、年間2,266トン。熱エネルギー回収量は、年間2.8メガワット(MW)と試算さえれている。
この統合システムは、英国および国際的な展開におけるモデルケースとして位置づけられている。
1億ポンド規模のグリーンボンドが後押し
本プロジェクトは、リジェンアースが投資会社RERキャピタル(RER Capital)と共同で組成した約1億ポンド(約196億円)規模のグリーンボンド・プログラムの一環である。この資金は、英国内でのAD・熱分解統合サイトの展開、原料のトレーサビリティ追跡、そして高品質な炭素クレジット生成ルートの確立に充てられる。
リジェンアースのミッキー・ルーニーCEOは、「我々は単に技術を導入するのではなく、カーマ(Carma)、ピュロ(Puro)、ビー・ゼロ(Be Zero)、マーシュ(Marsh)といった専門パートナーの能力を織り交ぜ、気候変動への具体的な解決策を加速させる」と述べ、ネットゼロを目指す企業や投資家に対し、世界最高水準のクレジットを提供する意欲を示した。
東南アジアでの実績に続く展開
オヌにとって今回の提携は、東南アジアでの初号機配備に続く重要なマイルストーンとなる。同社は直近でアグロテック・バイオエナジー(Agrotech Bioenergy)と提携し、ボルネオ島のプランテーションに2基のユニットを設置。年間約4万1,820トンの湿潤バイオマスを処理し、約3,937トンのカーボンクレジット創出を見込んでいる。
オヌのジャイルズ・ウェルチ(Giles Welch)CEOは、「セッジフィールドは、農業、炭素除去、再生可能エネルギー発電が商業的に成立する形で完全に統合できることを証明する理想的な環境だ」と指摘した。
参考:https://www.onnu.com/insights/onnu-regenearth-announce-sedgefield-project

