カーボンクレジットの新興基盤であるオープン・カーボン・プロトコル(OCP)は9月3日、米国の所有者不明の油井・ガス井を封鎖し、メタン排出を防ぐことでクレジットを発行する新たな手法を承認した。米シカゴ拠点の気候対策企業トレードウォーター(Tradewater)が提案し、OCPの独立専門家パネルによって承認されたもので、同プロトコルでは3件目の方法論となる。
承認された「Plugging Orphaned Oil and Gas Wells in the United States」は、放置されている孤立井戸からのメタン漏出を高い封鎖技術で防止し、その削減量を定量化する仕組みだ。メタンは二酸化炭素(CO2)の29倍の温室効果を持つ短寿命気候汚染物質であり、短期的な地球温暖化を加速させる。OCPは「非CO2ガスの削減は暴走的な気候変動を防ぐ上で不可欠だ」と強調している。
この方法論は従来の市場手法との差別化として、井戸の将来累積排出量を環境便益として定義、井戸ごとのメタン漏出リスクを信頼性高く測定する手法を確立、クレジット期間における排出減少率を経験則に基づき保守的に設定、封鎖の恒久性を担保する追加措置を導入、といった点を盛り込んでいる。
OCPはICVCMなどの基準に準拠し、方法論の設計からクレジット発行・償却に至るまで透明性を確保する仕組みを構築している。今回の承認により、孤立井戸問題を解決するスケールでのクレジット創出が可能になると期待される。
米国では推定数十万本規模の孤立油井・ガス井が放置されており、封鎖には巨額の費用がかかる。炭素クレジットを通じた資金動員は、環境負荷低減と同時に廃井管理の財源確保につながる可能性がある。OCPは今後も「高品質で信頼できる炭素市場」の構築を目指すとしている。