カーボン・トゥ・シー(Carbon to Sea)は9月9日、米国海洋大気庁(NOAA)、サブマリン・サイエンティフィック(Submarine Scientific)、約100人の研究者と共同で、海洋アルカリ度強化(OAE)の研究データを整理・共有するための新しいプロトコルを公表した。OAEは海洋素除去(mCDR)の手法として注目されているが、これまで研究データの形式が統一されておらず、比較や検証が難しいことが課題となっていた。
新しいプロトコルでは、センサーの観測値、炭酸化学の測定結果、シミュレーションのコードや出力、堆積物データ、社会科学データなど、OAE研究で扱う幅広い情報を対象にしている。これにより、研究者や事業者、資金提供者、規制当局が同じ基準でデータを扱えるようになり、安全性や有効性を確認するための「共通の基盤」が整う。
メリーランド大学の研究者で、NOAAの海洋炭素・酸性化データシステム(OCADS)を率いるリーチン・ジアン氏は「今回の取り組みは、政府、NGO、民間企業が共通のデータ基準を持つための初めての試みだ。これによりデータの発見・利用・比較が一貫してできるようになる」と説明した。
このプロトコルは、AGU(米国地球物理学連合)2024年大会でのワークショップを含め、複数回の公開レビューや専門家との協議を経て完成した。生物学や堆積学、社会科学の研究者に加え、センサー技術企業やカーボンレジストリも策定に参加している。
OAEの研究が国際的に広がる中で、透明性の高いデータ基準はカーボンクレジット市場にとっても重要な意味を持つ。プロジェクトの検証や認証プロセスが進めやすくなり、将来のクレジット発行の信頼性向上につながると期待されている。サブマリン・サイエンティフィックの共同創業者ジャッキー・ロング氏は「標準化された透明なデータは科学の信頼性の基盤だ」と強調した。
このプロトコルはNOAAとカーボン・トゥ・シーの支援を受け、今後も毎年見直しが行われる。新しい科学的知見や関係者の意見を取り入れながら、急速に発展するOAE研究と炭素市場に対応していく予定である。
参考:https://www.carbontosea.org/2025/08/25/oae-data-management-protocol/