ニュージーランド政府が設立したグリーン投資銀行であるニュージーランド・グリーン・インベストメント・ファイナンス(NZGIF)は、農業由来の温室効果ガス削減を加速させるため、アグリテック・スタートアップのルミナント・バイオテック(Ruminant BioTech)に対し、250万ニュージーランド・ドル(約2億3000万円)の株式出資を実施した。この投資は、脱炭素化が困難とされる農業セクターにおいて、家畜からのメタン排出を劇的に削減する技術の実用化を支援するものである。
今回の出資は、ルミナント・バイオテックが開発した家畜用メタン抑制技術の研究開発およびパイロット生産の加速を目的としている。同社が開発した技術は、胃の中で長時間作用する「徐放性ボラス(カプセル状の薬剤投与デバイス)」を用いるもので、家畜に投与することで、6カ月間にわたり牛1頭あたりのメタン排出量を最大70%削減できる可能性がある。農業分野、特に反芻(はんすう)動物からのメタン排出は、カーボンクレジット市場においても削減効果の定量化と大規模化が注目される領域であり、今回の資金調達は2025年の市場投入に向けた重要なステップとなる。
NZGIFのクレイグ・ワイズ(Craig Weise)最高経営責任者(CEO)は、ニュージーランドの温室効果ガス排出量の約半分が農業由来であり、そのうち75%が反芻動物のメタンによるものであると指摘した上で、次のように述べた。 「農業部門はこれまで、脱炭素化が最も困難な分野の一つであった。ルミナント・バイオテックは、家畜からのメタン排出を70%削減できる可能性のあるソリューションを開発している。我々の投資は、彼らの研究開発プログラムを加速させ、製品をより早く市場に投入するための支援となる」
この資金調達ラウンドには、NZGIFのほか、米国の気候特化型ベンチャーキャピタルであるリジェネレーション・VC(Regeneration.VC)や、ニュージーランド拠点のクライメート・アクション・ジョイント・ベンチャー・センター(Centre for Climate Action Joint Venture)など、国内外の投資家が共同出資者として参加している。これは、農業分野の脱炭素技術(アグリテック)が、世界的な気候変動対策資金の有望な投資先として認知されつつあることを示唆している。
ルミナント・バイオテックのジョージ・リーブス(George Reeves)CEOは、同社の技術について「牧草地での飼育において実用的かつ拡張性のあるユニークなソリューションだ」と強調し、次のようにコメントした。 「これがニュージーランドの農業温室効果ガス排出量に与える影響を想像してほしい。我々はこれを業界にとっての『ゲームチェンジャー』になり得ると考えている」
同社は現在、デアリーNZ(DairyNZ)やワイカト大学(University of Waikato)などの主要研究機関と連携し、厳格な臨床研究プログラムを進めている。まずはニュージーランド国内市場への製品展開に注力し、その後、世界市場への進出を目指す計画だ。製品の商用化と発売は2025年を予定している。
