米金融大手ノーザン・トラストは、香港金融管理局(HKMA)の主導する「Project Ensemble」に参画し、カーボンクレジットのトークン化を通じた国境を越えた取引実証に乗り出した。同社の「Northern Trust Carbon Ecosystem」と連携し、香港市場を軸としたボランタリークレジットの取引インフラ整備に貢献する。
トークン化が進む炭素クレジット取引、次なる舞台はアジア
ノーザン・トラストは2025年5月、香港金融管理局(HKMA)が推進するProject Ensembleへの参画を正式発表した。これは、ボランタリーカーボンクレジットのトークン化と国際取引の実現可能性を検証する実証プロジェクトであり、持続可能金融とデジタル資産の融合を目指す香港の国家的戦略の一環だ。
プロジェクトでは、「Ensemble Sandbox」と呼ばれる試験環境を通じ、グリーンファイナンス分野における実際のユースケースが検証される。
Northern Trust Carbon Ecosystem™ とは
ノーザン・トラストが2024年9月に正式ローンチした「Carbon Ecosystem」は、カーボンクレジットの発行、移転、精算、償却をデジタル台帳(プライベートブロックチェーン)上で一貫管理できるプラットフォーム。信頼できるオフチェーン・オンチェーン管理のハイブリッド構造を持ち、排出削減系と除去系の双方のクレジットに対応している。
投資家や企業は、このエコシステムを通じて信頼性の高いカーボンプロジェクトと直接つながり、クレジットの透明な購入・償却が可能となる。
国境を越えたサステナブルファイナンスのインフラ構築
プロジェクト・アンサンブルへの参加を通じて、ノーザン・トラストは「デジタル資産の革新」と「気候変動対策」の接続点を開拓しようとしている。グローバル・ストラテジックパートナーシップ責任者ジャスティン・チャップマン氏は「Project Ensembleへの参加は、持続可能な金融とデジタルアセットの橋渡しにおける大きな一歩です。カーボンクレジット市場におけるグローバルな接続性と信頼性を高めることで、投資家にとっての市場アクセシビリティが大きく広がります」と述べている。
同社アジア太平洋地域責任者アンジェロ・カルヴィット氏も、「アジアの金融・デジタル革新の中心地である香港が、サステナブルファイナンスの次世代を牽引する拠点になることは間違いありません。今回の取り組みは、APAC全域の持続可能市場を結びつけるインフラの中核となるでしょう」と香港の位置づけを強調する。