ノースダコタ州最高裁判所は8月29日、土地所有者団体が州のCO2貯留法を違憲と主張して起こした訴訟について、一審の却下判断を覆し、下級審に差し戻す決定を下した。この判断は、炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトの推進を巡り、米中西部全域に影響を及ぼす可能性がある。
問題となっているのは2009年制定の州法で、土地所有者の60%以上が同意すれば、残る少数の反対者の意思にかかわらずCO2の地下貯留を進められる「アマルガメーション(強制統合)」制度である。ノースウエスト土地所有者協会(NWLA)は、同制度が財産権を侵害し、不本意な土地所有者に十分な補償請求の機会を与えないと主張している。
昨年、地方裁判所は時効を理由に訴えを却下したが、最高裁はこれを退け、憲法上の争点を正面から審理するよう命じた。原告代理人の弁護士デリック・ブラーテン氏は「CO2アマルガメーションに対する本訴訟の主張がようやく正面から審理される」と歓迎の意を示した。
今回の訴訟は、サミット・カーボン・ソリューションズ(Summit Carbon Solutions)が進める総額55億ドル(約8,250億円)のパイプライン計画に直結する。同計画は5州のエタノール工場から排出されるCO2を輸送し、ノースダコタ州に設ける約9万エーカーの貯留地に圧入するものだ。すでに92%の土地所有者が同意しているが、残る少数派の権利を巡る憲法論争は避けられない情勢である。
州側は、ミンコタ・パワー(Minnkota Power)やベイシン・エレクトリック(Basin Electric Power)とともに法律の合憲性を主張し、アマルガメーション制度がなければCCS事業が停滞しかねないと警告する。州司法長官ドリュー・リグリー氏は「この法律は私有財産権を尊重しつつ、関係者の利益を憲法的に調和させている」と述べた。
一方、NWLAは声明で「土地所有者の権利を守るため最後の砦として司法に頼らざるを得ない」と訴え、今後の本案審理で違憲判断を勝ち取る姿勢を強調した。
この訴訟は、サミット計画にとどまらず、将来の地下ガス貯留法や他州でのCCS展開にも影響を及ぼす可能性がある。下級審での再審理は今後数カ月以内に始まる見通しで、ノースダコタ州における炭素貯留の法的枠組みを左右する重要な局面を迎えている。
参考:https://nwlandowners.com/northwest-landowners-association-wins-big-at-supreme-court/