ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、アイスランドの5カ国は、6月3日にコペンハーゲンで「Nordic Carbon Removal Association(NCRA)」を共同で設立した。目的は、炭素除去(CDR)技術の開発を加速し、地域経済と気候目標の両立を図ることにある。
北欧地域の強みを活かしたCDR産業化構想
NCRAは、各国の企業、研究機関、政策立案者を結集した連携体であり、北欧地域の自然資源や技術力を活用して、高品質で耐久性のあるCDR事業の展開を目指す。戦略青写真では、2050年までにCDR産業が域内GDPを最大約2.7兆円(約170億ユーロ)押し上げ、15万人の高度人材雇用を創出できると試算している。
先行プロジェクトと政策環境が後押し
ノルウェーの「ノーザンライツ」CO2貯留プロジェクトや、デンマーク・スウェーデンのBECCS事業など、北欧はすでに先進的なCDR事例の実績を持つ。
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これらに加え、政策支援や研究機関、スタートアップの存在が、同地域をグローバルなCDRハブとする基盤を形成している。
政策・市場連携による需要創出へ
NCRAは、断片化した政策や需給ギャップといった課題に対し、5カ国間の連携強化を通じて対応する。業界標準の確立、輸送・貯留インフラへの投資促進、国境を越えた制度整備に取り組み、需要喚起と産業の信頼性確保を目指す。
「今こそ行動を」NCRA事務局長
NCRAのヴァルター・セレン事務局長は、「科学的根拠も経済的利益も明確だ。北欧が連携すれば、世界をリードするCDR拠点となれる」と強調。気候変動対策が世界的に停滞する中で、北欧が主導するCDR推進の意義を訴えた。