米ニューハンプシャー州、森林カーボンクレジット課税を巡る法案が審議入りへ 業界・自治体で賛否分かれる

村山 大翔

村山 大翔

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米ニューハンプシャー州議会で、森林所有者がカーボンクレジット制度に参加する際の課税ルールを見直す法案「HB123」が審議入りし、2年間の検討委員会設置と暫定的な停止措置を盛り込む修正案が浮上している。背景には、同州の年間約2,200億円(14億ドル)規模の林産業に対する「実存的脅威」との懸念と、税収確保を求める自治体の声がある。

この法案は、カーボンクレジットマーケットに森林カーボン「クレジットを登録することで得られる収益に対して、既存の伐採税(Timber Tax)とは別に新たな課税を課す内容。支持派は「税制の抜け穴を塞ぎ、伐採を行わない土地に対しても公平な税負担を確保する」と主張。一方、反対派は「二重課税にあたり、林業の持続性や炭素吸収機能の維持を妨げる」として反発している。

特に問題視されているのは、2013年にカリフォルニア州の炭素市場に100年間登録されたコネチカット湖流域の約6万ヘクタールの土地。買収元であるAurora Sustainable Landsは伐採量を半減させた一方で、地元自治体の税収が大きく落ち込んでいる。これに対しては、代替支払い(PILOT)で一部補填されているが、恒常的な税制度の必要性が議論されている。

ニューハンプシャー州の税務当局は「法案の現行案では制度運用が不可能」と明言しており、州上院エネルギー・天然資源委員会では、7月1日以降2年間の新規登録凍結と併せて、制度設計を見直すための調査委員会の設置を検討中である。

森林所有者や業界団体の多くは「モラトリアムには反対だが、研究会設置は賛成」としており、短期的な規制よりも、税制・環境政策の整合性を図る中長期的な制度設計が求められている。

参照:https://gc.nh.gov/bill_status/billinfo.aspx?id=106&inflect=2