「日常通勤をカーボンクレジット化」Moovitが米国で新プロジェクト始動

村山 大翔

村山 大翔

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米都市交通アプリ大手のモービット(Moovit、利用者15億人)は8月、米国で新たな気候変動対策を開始した。同社が立ち上げた「Moovit Low Carbon Commute Project」は、公共交通やシェアモビリティ、徒歩など低排出の通勤を選んだ利用者の移動データを基に、検証済みのカーボンクレジットを発行する仕組みである。

モービットは全米のアプリ利用者に対し、推奨経路ごとの温室効果ガス(GHG)排出量を表示する新機能を導入した。利用者が低排出経路を選んだ場合、回避された排出量を算定し、第三者機関の検証を経てカーボンクレジットに変換する。

同プロジェクトはカナダのクライメートテック企業グリーンラインズ・テクノロジー(Greenlines Technology)と共同で開発され、同社の特許技術「モビリティ・カーボン・エンジン(MCE)」を活用する。移動距離や交通手段ごとの排出係数を基に、リアルタイムで削減量を算定するデジタルMRV(測定・報告・検証)システムであり、CSAクリーンプロジェクツ・レジストリに登録されている。

モービットのニール・ベザレル最高経営責任者(CEO)は「当社の大規模な利用者基盤を活用すれば、個人の選択を集約して社会全体の気候行動につなげられる」と述べた。さらに「利用者の選択が排出削減を生み、その成果は企業の排出オフセットにも貢献する」と強調した。

企業側はモービット利用者が生成したカーボンクレジットを購入することで、自社のScope1,2,3排出量の一部をオフセットできる。これは利用者による日常的な行動変容を企業の気候戦略に接続する「人の力による脱炭素モデル」と位置づけられる。

グリーンラインズの共同創業者デイビッド・オリバーCEOは「移動アプリを通じて、個人の低排出行動を高品質なカーボンクレジットに変換するのは初の試みだ」と述べ、行動変容と市場メカニズムを結び付ける点を強調した。

同プロジェクトは「Moovit Low-Carbon Transportation: Enabling Modal Shift in the USA」として登録されており、今後は企業の資金提供と利用者の選択が循環的に作用し、都市交通のさらなる脱炭素化を促す仕組みとなる。

参考:https://moovit.com/press-releases/moovit-carbon-credits-csa-registry/