英国のクライメートテック企業、ミッションゼロテクノロジーズ(Mission Zero Technologies(MZT))は8月13日、カナダ・アルバータ州の炭素除去(CDR)拠点「Deep Sky Alpha」で、自社初、海外での直接空気回収(DAC)装置の運転を開始した。年250トンのCO2を大気中から回収し、地中に永久貯留する計画で、従来比で60%のコスト削減を実現した。
ミッションゼロテクノロジーズは、カナダにあるCDR施設「Deep Sky Alpha」にて、自社3台目となるDAC装置を稼働させた。これが同社にとって初の海外展開であり、太陽光のみで稼働する仕組みが特徴だ。装置は大気中から年間最大250トンのCO2を直接回収し、Deep Skyが地中に安全に封じ込める。
Deep Sky Alphaは、さまざまな企業のDAC技術を試験・評価する拠点として、2025年6月に完成。今夏中の本格稼働を予定しており、ミッションゼロテクノロジーズの装置はその第一弾として導入された。Deep Skyのアレックス・ペトレCEOは「複数のDAC技術が同時に動き出すことは、業界全体にとって大きな一歩」と語っている。
ミッションゼロテクノロジーズはこれまでに英国で2つのDAC装置を運用している。1号機は2023年にシェフィールド大学と共同開発し、年間50トンのCO2を除去して航空燃料に転用。2号機は2025年5月にO.C.Oテクノロジーおよび英国エネルギー省と連携し、CO2を建材用の炭素ネガティブ石灰石に変換する。こちらも年250トンの除去能力を持つ。
今回カナダで稼働した3号機は、1号機に比べて除去能力を5倍に拡大しつつ、コストを60%削減した。ミッションゼロテクノロジーズのニコラス・チャドウィックCEOは「この装置は当社技術が海外でも通用することを示す大きな成果」と強調し、今後は年間キロトン規模のCO2回収に向けてさらなる拡張を目指すとした。
ミッションゼロテクノロジーズは現在、大気から回収したCO2を「燃料」「建材」「地中貯留」の3つの方法で活用している。こうした多様な実証は、技術の信頼性向上と迅速なコスト低下に貢献しており、将来の大規模展開に向けた基盤となっている。