CO2除去の新評価枠組み「CCF」始動 企業の「炭素除去・気候資金」を包括スコア化

村山 大翔

村山 大翔

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COP30の閉幕を受け、仏運用会社ミロヴァ(Mirova)と炭素管理プラットフォームのスウィープ(Sweep)は2025年11月26日、企業の気候変動対策を包括的に評価する新基準「気候貢献フレームワーク(CCF)」を正式に発表した。従来の温室効果ガス(GHG)排出量の「削減」一辺倒の評価から脱却し、炭素除去(CDR)技術への投資や削減貢献量といった「貢献」を科学的根拠に基づいてスコア化する初の試みとなる。

パリ協定採択から10年が経過し、企業の脱炭素戦略は岐路に立たされている。SBTiなどの既存基準は自社バリューチェーン内の排出削減を最優先としてきたが、これだけではネットゼロ達成に必要な資金循環や技術革新が停滞するという課題があった。今回発表されたCCFは、米環境保全団体ウィンロック・インターナショナル(Winrock International)らが開発を主導。「メタフレームワーク」として既存の基準を補完しつつ、これまで評価されにくかった企業の「外側への貢献」を可視化する。

CCFは、以下の3つの柱で企業の気候アクションを評価・加重平均する。

  1. カーボンフットプリント削減:バリューチェーン全体(Scope1,2,3)における排出削減実績。
  2. 気候ソリューション:自社製品・サービスを通じた排出回避や、大気中の二酸化炭素(CO2)を除去する技術の展開。
  3. 気候ファイナンス:革新的な低炭素技術や、自然由来ソリューション(NbS)、炭素除去プロジェクトへの資金動員。

特筆すべきは、第3の柱において、ボランタリーカーボンクレジット(VCM)の購入やCDRプロジェクトへの直接投資が、企業の「気候ファイナンス貢献」として明確に評価される点だ。従来、カーボンオフセットの利用は削減目標の達成手段としては厳しく制限されていたが、CCFではこれを「社会全体のネットゼロを加速させる資金貢献」と位置づけ、セクターごとの重み付けを行った上で正当に評価する。

ミロヴァのフィリップ・ザオウアティCEOは、「排出削減だけに焦点を当てる時代は終わった。企業や投資家がリソースを最もインパクトのある場所へ配分できるよう、完全なスペクトルを評価する必要がある」と述べ、新基準の意義を強調した。

この枠組みには、フランス電力公社(EDF)、ルノー・グループ(Renault Group)、シュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)などの欧州大手企業が支持を表明している。また、SBTiや国際排出量取引協会(IETA)の専門家もオブザーバーとして参加しており、国際的なルール形成に一石を投じる形となった。

投資家や規制当局にとって、CCFは「実質的な気候インパクト」を追求する企業と、単に事業を継続しているだけの企業を見分けるための新たなベンチマークとなる。日本企業が得意とする省エネ技術による「削減貢献量」や、商社などが進めるCDR投資が正当に評価される土壌が整いつつあり、今後の開示戦略に大きな影響を与えそうだ。

参考:https://www.sweep.net/newsroom/mirova-research-center-sweep-announce-the-launch-of-the-climate-contribution-framework-a-new-standard-for-corporate-climate-action