「Varahaの再生農業プロジェクト」に47億円投資 Mirova、アジアでの土壌炭素除去を本格化

村山 大翔

村山 大翔

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サステナブル投資を専門とする資産運用会社ミロバ(Mirova)は、アジア最大のカーボンプロジェクト開発企業であるヴァラハ(Varaha)がインドで推進する再生農業プロジェクト「ケティ(Kheti)」に対し、3,000万ドル(約47億円)を投資したと2025年11月13日に発表した。

この取引は、ミロバの自然資本戦略における過去最大の単独投資であり、同社にとってインド初となる自然ベースの炭素除去(CDR)プロジェクトへの参画となる。アジア太平洋地域における高信頼性の気候ソリューションの規模拡大を目指すミロバの戦略的転換点を示すものだ。

ケティ・プロジェクトは、インドのハリヤーナー州とパンジャーブ州の67万5,000ヘクタールにわたる地域で、33万7,000人以上の小規模農家による再生農業への移行を支援する。具体的には、直播栽培(Direct Seeding of Rice)、作物残渣の管理、不耕起栽培(Reduced Tillage)などの手法を導入することで、大気中の二酸化炭素(CO2)を土壌中に固定し、土壌有機炭素貯留(Soil Organic Carbon)を強化することを目的としている。

この取り組みは、高信頼性のカーボンクレジットを創出すると見込まれており、認証機関ベラ(Verra)のVM0042手法に準拠する。創出されたカーボンクレジットの販売収益は、農家に直接還元されるレベニューシェアメカニズムが採用される。さらに、気候・コミュニティ・生物多様性(CCB:Climate, Community & Biodiversity)認証の取得も目指し、気候変動対策だけでなく、地域社会と生態系への共同利益(コベネフィット)も追求する。

ヴァラハのマネージングディレクター兼CEOであるマドゥール・ジェイン氏は、「このパートナーシップは、大規模かつ高信頼性のカーボンプロジェクトが、農村の生活向上にも繋がることを証明するものだ」と、気候レジリエンスと農村の繁栄の両立を強調した。

ヴァラハは2022年設立以来、アジア最大のCDRプロジェクト開発企業へと成長し、バイオ炭、植林、強化された岩石風化(Enhanced Rock Weathering)など、多様なCDRアプローチをポートフォリオに持つ。同社CFOのイカルス・ジャンゼン氏は、今回の取引が「土壌炭素再生農業分野における世界最大の取引」である可能性を指摘し、この投資がプロジェクト初日から実行可能である点に、従来のカーボンオフテイク契約との違いがあると述べた。

ミロバのシニア・インベストメント・ディレクターであるシャーロット・リーマン氏は、今回の取引について「農業の体系的な変革を推進し、脆弱な農村コミュニティの回復力を強化する上で、カーボンファイナンスがいかに有効かを示す好例である」と評価した。

ヴァラハは、インドを主要な焦点としつつ、ネパール、バングラデシュ、ブータンなど南アジア全体で活動を拡大している。再生農業が持つ「2030年までにクレジットを生み出せる」という時間的優位性、費用対効果の高さ、そして土壌・水質改善、雇用創出といった顕著なコベネフィットが、投資家にとって魅力的な要因だとジャンゼン氏は付け加えた。

参考:https://www.mirova.com/en/news/mirova-invests-usd30-million-varahas-regenerative-agriculture-project-india-its-largest-carbon