マイクロソフトはスウェーデンのエネルギー企業 Stockholm ExergiとのCDR契約を拡大し、契約総量を5.08百万トンに引き上げました。この拡張は、2024年5月に発表された初回契約(3.3百万トン)に基づくもので、世界最大級のBECCS施設を通じた排出削減を目的としています。
年間80万トンのCO2除去を見込む世界的BECCS拠点
CO2の除去は、ストックホルム港近郊のヴァータン地区で現在建設中のBECCSプラントによって実施されます。このプラントは約13億ドル(約2,000億円)を投じて開発され、2028年の稼働開始が予定されています。稼働すれば、年間80万トンのバイオ起源CO2を回収し、ストックホルムの道路交通由来の年間排出量を上回る削減を実現するとされています。
除去されたCO2は一時的に保管された後、ノルウェーの北海海底へと輸送され、恒久的に貯留される予定です。この地中貯留には、Equinor、Shell、TotalEnergies が主導するNorthern Lightsプロジェクトとの連携が行われています。
「世界最大のCDR契約」として注目
Stockholm Exergiの発表によれば、マイクロソフトとの本契約は年間供給量で世界最大のCDRオフテイク契約とされており、持続可能で検証可能な負の排出(minus emissions)を商業規模で確立する道筋を示しています。
同社CEOのアンデシュ・エーゲルルード氏は「マイクロソフトが当社との契約を拡大したことは、当社のBECCSプロジェクトに対する強い信頼の証であり、気候変動との戦いに本気で取り組む企業の決意を裏付けています」と述べました。
マイクロソフト、グローバルCDR戦略を加速
マイクロソフトは過去1か月で複数のCDR契約を締結しており、今回の拡張契約はその戦略の一環です。最近では、Carba(バイオ炭)、Living Carbon(森林再生)、AtmosClear、CO280(製紙業界での脱炭素化) との契約も発表。これらの案件を通じ、企業としてのカーボンネガティブ目標(2030年まで)に向けて着実に前進しています。
CDRマーケットにおける先駆的事例としての意義
BECCSを活用した本プロジェクトは、炭素回収・輸送・地中貯留の各工程を包括的に備えたフルバリューチェーン型のCDRインフラとして世界から注目されています。ボランタリーカーボンマーケットにおける大型案件の代表例となる可能性もあり、CDR分野での投資加速と政策整備に対するインパクトは大きいと見られています。