気候変動に脆弱な島嶼国ミクロネシア、初の技術ニーズ評価を開始 気候変動対策を強化へ

村山 大翔

村山 大翔

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ミクロネシア連邦(FSM)は8月、気候変動対策に必要な技術を特定する初の「技術ニーズ評価(TNA)」プロセスを正式に開始した。対象は緩和分野でエネルギーと農業(食料安全保障)、適応分野で保健と水資源とし、国の持続可能で気候強靭な発展を支える枠組みづくりを進める。

FSMは太平洋西部に広がる607の島々からなる小島嶼開発途上国(SIDS)で、海面上昇や台風被害の増大など気候変動の影響に最も脆弱な国の一つである。国民の多くが自給的農業や漁業に依存しており、海水の浸入による淡水汚染やインフラ被害が深刻化する中で、適応策は最優先課題と位置付けられている。

FSMは国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の国別貢献目標(NDC)で、2000年比28%の排出削減を無条件に、さらに35%削減を外部支援条件付きで約束している。だが、他のSIDS同様、目標達成には莫大な資金と技術移転が不可欠であり、国際社会から少なくとも105億ドル(約1兆6,000億円)の支援が必要とされる。

今回のTNAは、国環境気候変動・緊急事態管理局が統括し、国連環境計画コペンハーゲン気候センター(UNEP Copenhagen Climate Centre)が実施する。エネルギー、廃棄物、農業、水資源を優先分野に掲げ、投資を呼び込むための具体的技術を分析する。

パリキール(ポンペイ州)で行われた開始ワークショップには政府機関、国際機関、民間、学術関係者が参加した。FSMは再生可能エネルギー導入による化石燃料依存からの脱却、エネルギー効率改善、持続可能な土地利用の推進を掲げており、炭素クレジット市場の活用や技術移転による資金調達も今後の焦点となる。

国連のTNA事業は、地球環境ファシリティ(GEF)の資金で運営され、UNFCCC技術メカニズム(技術執行委員会と気候技術センターネットワーク)と連携している。FSMの取り組みは、SIDS全体が国際炭素市場や適応資金へのアクセスを拡大する試金石となりそうだ。

参考:https://unepccc.org/micronesia-tna-launch/