Metsaが炭素回収(CCS)実証を開始 製紙工場副産物「CO2」の活用可能性を調査

村山 大翔

村山 大翔

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フィンランドの林産業大手メッツァ・グループ(Metsa Group)は9月4日、同国ラウマ工場でパルプ製造の排ガスを対象にした炭素回収(CCS)のパイロット設備を稼働させたと発表した。オーストリアの技術企業アンドリッツ(Andritz)が装置を供給し、2025年秋にかけてエネルギー消費量や回収効率など複数の運転条件を検証する。

同社は今回の試験を通じて、より大規模なデモプラント建設の可能性も探る。ラウマ工場内に計画されるデモ設備は年間3万〜10万トンのCO2を回収できる規模で、現行パイロット設備(日量約1トン)の100倍以上にあたる。事業化には技術的・財務的な課題の解決が前提となる。

メッツァ・グループで事業開発担当上級副社長を務め、炭素回収プロジェクトを統括するカイジャ・ペフ=レフトネン氏は「現在のところ、パルプ工場の排ガスにおいて技術は良好に機能している」と述べた。また「投資規模は大きく、市場は未成熟であるため段階的に進める。バリューチェーンは新規性が高く複雑であり、関係者間の緊密な協力が不可欠だ」と指摘した。

同社によると、バイオ由来のCO2はパルプ工場でほとんど活用されていない副産物であり、化学品や燃料の原料として利用できる可能性がある。化石資源代替の観点からも注目されるが、製紙原料の木材使用量や生産効率に影響は与えないという。

一方、市場形成にはEUおよび各国の規制整備や、グリーントランジションを後押しする投資支援が不可欠とされる。ペフ=レフトネン氏は「国家支援が産業投資を加速させる重要な要素になる」と強調した。

参考:https://www.metsagroup.com/news-and-publications/news/2025/metsa-groups-carbon-capture-pilot-underway–investigation-of-a-demo-plant-beginning