マレーシアの国営石油・ガス大手ペトロナス(Petronas)の完全子会社であるペトロナスCCSベンチャーズ(PCCSV)は、11月10日、同国で初となる洋上での二酸化炭素回収・貯留(CCS)査定許可をマレーシアCCS庁(MyCCUS)から獲得した。これは、10月1日に施行されたばかりの「炭素回収・利用・貯留法(CCUS Act 2025)」に基づき発行された最初の許可となり、同国の低炭素エネルギー移行と地域的なカーボンクレジット創出に向けた重要な一歩となる。
マレーシア政府、Duyong鉱区の査定権をPCCSVに独占付与
PCCSVが今回独占的な権利を得たのは、マレー半島沖合にあるDuyong(ドゥヨン)ガス田の地質査定である。同社はこの許可を受け、Duyongを「南部CCS洋上ハブ」の一部として、技術的および商業的に実行可能なCO2貯留サイトとするための詳細な調査を進める。PCCSVは7月、すでに日本の三井物産およびフランスのトタルエナジーズ(TotalEnergies)と基本原則協定(KPA)を締結しており、共同でプロジェクトを推進する体制を整えている。
アジア太平洋地域初の統合CCSソリューションを目指す
PCCSVのエムリー・ヒシャム・ユソフ最高経営責任者(CEO)は、「MyCCUS庁からの査定許可は、Duyong CCSプロジェクトにとって極めて重要な節目だ」と述べ、「トタルエナジーズと三井物産との連携を次の技術研究・評価フェーズに進めることを可能にし、Duyongを安全かつ商業的に実現可能なCO2貯留サイトにする可能性を高める」と指摘した。
パートナー各社は今後、フロントエンド・エンジニアリング・設計(FEED)フェーズへの移行を目指しており、これはアジア太平洋地域の産業界向けとしては「初の統合CCSソリューション」となる見込みである。この取り組みは、CCSを脱炭素化の主要な手段と位置づけるペトロナスの2050年ネットゼロ達成目標を後押しするものであり、マレーシアを越境炭素管理における地域リーダーとして確立する狙いがある。
法遵守を徹底し、CCS関連法に基づく初の事例に
今回の査定活動は、新設されたCCUS Act 2025および関連する「洋上許可・ライセンス規則 2025」を完全に順守して実施される。マレーシアの歴史的な法律であるCCUS Act 2025の施行後、最初の洋上許可案件となったことで、同国はCCS産業の基盤構築に向けた強いコミットメントを国際社会に示した。Duyong鉱区での調査結果に基づき、PCCSV、三井物産、トタルエナジーズの3社連合は、商業化に向けた次なる投資判断を迫られることになる。
参考:https://www.petronas.com/media/media-releases/petronas-ccs-ventures-sdn-bhd-receives-malaysias-first-offshore-assessment