AI監視で森林カーボンクレジットの信頼性担保 マラウイ政府DAI Labsと提携し年間1,050億円の収益狙う

村山 大翔

村山 大翔

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マラウイ政府は2026年2月初旬、ソフトウェア提供企業のダイ・ラボ(DAI Labs)との戦略的提携を発表し、人工知能(AI)と衛星モニタリング技術を導入した炭素市場の近代化に着手した。

本提携は、同国が管理する森林および民間プロジェクトの透明性と信頼性を高める品質管理システムの構築を目的としている。マラウイはこの取り組みを通じて、国際市場で高く評価されるカーボンクレジットを供給し、年間最大7億ドル(約1,050億円)の収益確保を目指す。

本提携の中核となるのは、ダイ・ラボが開発した環境インテリジェンス・プラットフォーム「キャノピースコープ(CanopyScope)」の導入である。同システムは、衛星データを用いて森林の健康状態や炭素貯蔵量をリアルタイムで追跡し、科学的根拠に基づいた監視を可能にする。2月2日には、首都リロングウェにてパトリシア・ウィスケス天然資源・気候変動相(Ministry of Natural Resources and Climate Change)ら政府高官に対し、自然ベースの解決策(NbS)の検証に特化したデモンストレーションが実施された。

マラウイ政府が新たに策定した「炭素市場枠組み」において、ダイ・ラボの技術は国家登録簿の運用を支援する役割も担う。これにより、同国が独自に発行するカーボンクレジットの計上における整合性が確保される。また、覚書(MoU)の一環として、ダイ・ラボは現地のパートナー企業であるアイライズ・カーボン(iRise Carbon)と協力し、国内機関への技術移転とキャパシティ・ビルディングを進める方針を固めた。

ウィスケス大臣は会合の中で、国家の主体性を重視する姿勢を鮮明にしている。「マラウイが主導し、パートナーはマラウイの国民と機関が定めた方向に沿って我々を支援する」と述べ、外部主導ではない自国主導の気候変動対策を強調した。これに対し、ダイ・ラボの共同創設者兼最高経営責任者(CEO)であるブライアン・アトウッド氏は、「科学的な厳密さと現地の知見を組み合わせ、マラウイの天然資源に対する責任ある管理を支える基盤を提供したい」と応じた。

今回の動きは、マラウイが2025年10月に発表した「パリ協定実施プラットフォーム(PAIP)」に続く、デジタル技術を活用した気候ガバナンス強化の一環である。同国はグリーン・エコノミー・パートナーシップ(GEP)とも連携しており、一連のデジタルツール群を統合することで、グローバルサウスにおける高完全性な炭素取引のリーダーとしての地位確立を急いでいる。政府は今後、投資家や民間セクターに対し、高精度な測定・報告・検証(MRV)ソリューションを備えたクレジット供給への参画を呼びかけていく構想だ。

マラウイの動向は、単なる一国の技術導入に留まらず、アフリカ諸国が「自国の炭素資源に対する主権」をデジタル技術で守ろうとする強い意志の表れといえます。これまで途上国のカーボンクレジットは、先進国の検証機関に依存せざるを得ず、利益の多くが外部へ流出する構造がありました。

しかし、今回のダイ・ラボとの提携や2025年のPAIP稼働に見られるように、AIと衛星データを自国で管理下に置くことで、マラウイは「売る側」として対等な交渉力を得ようとしています。日本の事業者にとっても、こうした「国家が品質を保証するデジタル基盤」を持つクレジットは、グリーンウォッシュ・リスクを回避する上で有力な選択肢となるでしょう。

今後、他のアフリカ諸国がこの「マラウイ・モデル」を追随するかどうかが、国際的なクレジット価格形成の鍵を握ることになりそうです。

参考:https://dailabs.ai/dai-labs-presents-canopyscope-to-malawi-government-and-proposes-mou-for-forest-monitoring-and-carbon-project-auditing/