米ルイジアナ州で住民らが提訴 CCS用CO2パイプライン建設に伴う「土地収用」の違憲性を主張

村山 大翔

村山 大翔

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米ルイジアナ州の住民団体と地方議員らが11月20日、炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトのための二酸化炭素(CO2)パイプライン建設において、民間企業による私有地の強制収用を認める州法は憲法違反であるとして、ジェフ・ランドリー(Jeff Landry)州知事らを相手取り提訴した。CCS開発に伴うインフラ整備が急拡大する中、土地所有者の権利保護と事業の公益性を巡る対立が法廷闘争へと発展した形だ。

開発加速と高まる「土地収用権」への反発

訴状はバトンルージュの第19司法地区裁判所に提出された。原告である住民団体「セーブ・マイ・ルイジアナ(Save My Louisiana)」は、グレイ・マスグローブ(Gray Musgrove)代表を中心に、アレン郡やボーリガード郡などCCS開発が集中する同州中部・南西部の5つの郡(Parish)の住民や選出議員で構成されている。被告にはランドリー知事のほか、州保全エネルギー局のダスティン・デビッドソン長官が指名された。

原告側は、CCS開発業者が土地収用権(eminent domain)を行使して私有地を取得することを認める現行の州法について、「民間企業に不当な特権を与え、市民の財産権と適正手続きの権利を侵害している」と主張している。州法では、CO2パイプラインは気候変動対策として公共の利益に資すると開発業者が主張することを認めているが、原告側はこの論理に真っ向から異議を唱えている。

31件のプロジェクトが進行中、承認は1件のみ

ルイジアナ州は現在、脱炭素化の重要拠点として注目されており、同局によると31件の炭素回収プロジェクトが審査段階にある。これらは合計101のCO2圧入井(インジェクション・ウェル)を18の郡にまたがって建設する計画だが、現時点で承認されているのはキャメロン郡の「ハックベリー・カーボン・セクエストレーション(Hackberry Carbon Sequestration)」の1件のみである。

開発側や州政府の一部は、大気中の温室効果ガスを除去・貯留することは気候変動緩和という「公益」に該当し、土地収用は正当化されるとの立場をとる。一方で、原告側を支持するジョン・フレミング州財務官(米上院選候補者)は、「これは公共の利益のためではない。多額の利益を得ることになるごく一部の人々のためのものだ」と指摘し、特定の民間利益のための強制収用を強く批判した。

伝統的な共和党支持層に亀裂

この論争は、伝統的に石油・ガス産業と密接な関係にある同州の共和党内にも亀裂を生じさせている。ランドリー知事がCCS導入を積極的に推進する一方で、フレミング氏を含む一部の共和党議員は、土地所有者の権利保護や地方自治体による管理強化を求めている。

また、住民の不信感を増幅させているのが安全性への懸念だ。2020年にミシシッピ州サターティアで発生したCO2パイプライン破裂事故では45人が入院する事態となり、反対派にとって象徴的な事例となっている。ボーリガード郡の住民であるモナ・デフリーズ氏は、「安全性の問題が私たちに十分明確に説明されていない」と述べ、情報開示の不足を訴えた。

本訴訟の行方は、米国におけるCCSインフラ整備のスピードや、社会的受容の形成プロセスに重大な影響を与える可能性がある。

参考:https://lailluminator.com/2025/11/20/central-louisiana-residents-leaders-sue-louisiana-over-carbon-capture-land-seizures/