リトアニア唯一のセメント大手が1,100億円超を投資 バルト海圏初カーボンクレジット創出を見据えたCCS実装へ

村山 大翔

村山 大翔

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リトアニアのセメント製造大手、アクメネス・ツェメンタス(AB Akmenės cementas)は、総額7億ユーロ(約1,120億円)を超える大規模な脱炭素投資計画を明らかにした。

この投資の主眼は、製造過程で排出される二酸化炭素(CO2)を回収・貯留する炭素回収・貯留(CCS)技術の実装にあり、2035年以降のカーボンニュートラル達成を目指す。欧州における排出規制の強化を背景に、同社は持続可能なカーボンクレジットの創出と市場競争力の維持を狙う。

セメント産業は、原料である石灰石の熱分解プロセスにおいて大量のCO2が発生するため、燃料転換だけでは脱炭素化が困難な「ハード・アバウト・アベート」セクターに分類される。アクメネス・ツェメンタスのアルトゥーラス・ザレンバ最高経営責任者(CEO)は、「もはや増産ではなく、CO2排出強度の低減こそが最優先事項である」と断言した。

今回の投資計画のうち、約6億ユーロ(約960億円)がCCSインフラに割り当てられる。具体的には、リトアニアのケーエヌ・エナジーズ(KN Energies)、シュウェンク・ラトビア(SCHWENK Latvija)、および日本の三井商船(Mitsui O.S.K. Lines)などが参画する「CCSバルティック・コンソーシアム(CCS Baltic Consortium)」を通じて、回収したCO2を液化し、船便で北海の地下貯留施設へと輸送するバリューチェーンを構築する計画である。

同社の2024年における年間CO2排出量は約87万トンに達しており、現在のEU排出権取引制度(EU-ETS)下でのコスト負担は年々増大している。

  • 総投資額:7億ユーロ(約1,120億円)
  • CCS関連投資:6億ユーロ(約960億円)
  • 排出削減目標:2035年までに気候中立(ネットゼロ)を実現
  • 代替燃料活用
    既に約3,000万ユーロ(約48億円)を投じ、化石燃料の80〜90%を廃棄物由来燃料(RDF)に代替するインフラを整備済み

欧州ではカーボンクレジットの信頼性向上が急務となっており、技術ベースの炭素除去(CDR)や確実な排出回避に対する評価が高まっている。今回のCCSプロジェクトは、バルト海地域における初の産業スケールでの実装となり、将来的に高付加価値なカーボンクレジットを創出する基盤となる。

本プロジェクトは、リトアニアのクライペダ港をCO2輸出の拠点へと変貌させる可能性を秘めている。2026年中に環境影響評価(EIA)および基本設計(FEED)を完了させ、最終投資決定(FID)へと進む予定である。

課題は、国境を越えたCO2輸送にかかる物流コストと、長期的な貯留権の確保である。しかし、EUによる炭素国境調整措置(CBAM)の本格運用を前に、炭素コストを内部化できないメーカーは市場から淘汰されるリスクがある。アクメネス・ツェメンタスの決断は、地域全体の産業デkarbonise(脱炭素化)を加速させる試金石となるだろう。

今回の動きで注目すべきは、日本の三井商船がバルト海のCCSコンソーシアムに深く関与している点である。これは、日本企業が持つ海上の液化CO2輸送技術が、欧州のカーボンクレジット市場において不可欠なピースとなっていることを示唆している。日本の製造業においても、単なる省エネに留まらず、こうした国際的な回収・貯留網への参画、あるいは同様のモデルをアジア圏で構築することが、将来的なカーボンクレジットの確保と競争力直結の鍵となるだろう。

参考:https://www.linkedin.com/posts/activity-7432059363869114368-7Y_-