リベリア共和国のジョセフ・ニュマ・ボアカイ大統領は2025年10月31日、同国の炭素市場を統括するカーボン・マーケッツ・オーソリティ(CMA:Carbon Markets Authority)の設立を定めた大統領令第155号を発令した。
この一環として、海運および航空部門に対してCO2換算1トンあたり25ドル(約3,700円)の炭素課徴金を導入し、国家主導で気候変動対策と経済成長の両立を図る。同国は豊富な森林資源を背景に、国際的な炭素市場における地位確立を急ぐ方針だ。
CMAの設立は、リベリアが保有する広大な森林や海岸線、再生可能エネルギー資源を最大限に活用し、持続可能な経済成長を促進する狙いがある。同機関は気候変動対策に関する国家的な主導権を持ち、パリ協定に基づく国際的な枠組みへの適合や、政策立案、市場への参加監視を包括的に担う。組織運営については、大統領が任命する気候行動特使が最高経営責任者(CEO)を務め、最高執行責任者(COO)および最高財務責任者(CFO)がこれを支える強力な執行体制を敷く。
対象となるセクターは林業やブルーエコノミーに加え、再生可能エネルギー、農業、廃棄物管理、都市開発など多岐にわたる。市場の透明性を確保するため、カーボンクレジットの発行と取引を厳格に追跡するナショナル・カーボン・レジストリ(National Carbon Registry)も同時に創設された。さらに、炭素市場からの収益を管理・再投資するためのリベリア・カーボン・インベストメント・ファンド(LCIF:Liberian Carbon Investment Fund)も立ち上げ、国務省傘下の監視委員会がその運用を監督する。
LCIFの収益は、農村部の電化やクリーンウォーターへのアクセス改善、小規模農家による再植林支援といった、包摂的な開発プロジェクトに優先的に充当される計画だ。ボアカイ大統領は「この大統領令は、環境保護と地域社会の強化、そして天然資源の経済的潜在力を透明性の高いガバナンスを通じて解き放つという政府の決意を示すものだ」と述べ、リベリアを信頼される気候行動のパートナーとして位置づける意欲を強調した。
今回の措置により、リベリアは自国の決定論的な貢献(NDC)の達成に向けた大きな一歩を踏み出したことになる。航空および海運への課徴金は、これら排出セクターからの資金を直接的に気候耐性の強化へ振り向ける画期的な仕組みとなる。
今後はCMAを中心に、具体的なプロジェクトの認証プロセスや、25ドルという価格設定が国際市場に与える影響が注視される。
リベリアの今回の動向は、途上国が「クレジットを売る側」から、自ら「炭素価格を設定し、市場を統治する側」へシフトする強い意志の表れである。特に25ドルという課徴金設定は、ボランタリーカーボンクレジット市場の低迷が続く中で、コンプライアンス市場を見据えた野心的な価格付けと言える。


