米国の炭素除去(CDR)ソリューション・デベロッパーであるラピス・カーボン・ソリューションズ(Lapis Carbon Solutions、以下ラピス社)は、エネルギー企業のビッグ・リバー・リソース(Big River Resources)と共同で、イリノイ州ガルバのエタノール製造施設に隣接する新たな二酸化炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトのクラスVI(Class VI)許可申請を米国環境保護庁(EPA)へ提出した。本プロジェクトは、12年間の操業期間にわたり、年間72万5,000トン以上のCO2を地下へ永久貯留することを目的としている。
本計画は、先行して実施された地層テスト井の掘削成功を受けたものである。
調査の結果、当該地の地下構造がCO2の安全かつ長期的な地質学的貯留に適していることが確認された。許可が下りれば、エタノール製造過程で排出されるCO2を直接回収し、現場で貯留する「オンサイトCCS」が実現し、同工場で生産される燃料の炭素集約度(CI)を大幅に引き下げることが可能となる。
米国中西部におけるこの動きは、低炭素燃料市場での競争力維持を狙った戦略的なステップである。現在、エタノール生産者はサプライチェーン全体の脱炭素化を迫られており、特に持続可能な航空燃料(SAF)や低炭素ガソリン混合成分といったプレミアム市場への参入には、CCSによる排出削減が不可欠な条件となっている。
本プロジェクトの経済性を支えるのが、米国の内国歳入法第45Q条に基づく税額控除である。
CCSによる地中貯留の場合、CO2トンあたり最大85ドル(約1万2,750円)の控除が受けられる。本プロジェクトの規模(年72.5万トン)に当てはめると、年間で約6,160万ドル(約92億4,000万円)、12年間の総額では約7.4億ドル(約1,110億円)規模のインセンティブが見込まれる計算となり、初期投資の不確実性を大幅に低減させる。
ラピス社のレグ・マンハスCEOは、「中西部市場では、排出源のニーズに合わせた個別のカーボンソリューションがかつてないほど求められている。当社の技術は、排出企業と地域社会の双方に利益をもたらすものだ」と述べている。
米国では、メキシコ湾沿岸に大規模なCO2輸送・貯留ハブを構築する動きがある一方で、中西部では輸送コストと許認可の複雑さを最小限に抑えるため、排出源に貯留施設を併設する「分散型CCS」の需要が高まっている。バイオエネルギーとCCSを組み合わせた「BECCS」の初期形態とも言えるこのモデルは、最もコスト効率の高い排出削減策の一つとして、政策立案者からも注目を集めている。
今後、低炭素燃料基準(LCFS)の厳格化や世界的なSAF需要の拡大に伴い、エタノール工場へのCCS導入は、単なる環境対策を超え、企業の市場アクセスを確保するための必須の経営戦略となると予想される。
米国で先行する「工場隣接型CCS」のモデルは、輸送インフラが未整備な地域でも脱炭素化が可能なことを示している。
これは、SAF原料の確保を急ぐ日本の商社や、海外でのカーボンクレジット創出を狙う国内企業にとって、中西部のエタノール拠点が有望な投資・提携先となる可能性を強く示唆している。
