ケニア環境・気候変動・森林省とスウェーデンエネルギー庁(SEA)は17日、パリ協定第6条2項(Article 6.2)に基づき国際排出権(ITMO)を相互移転できる枠組み協定を締結した。これにより両国は2026年以降に温室効果ガス削減プロジェクトを共同実施し、排出量報告と資金循環を一体化させる。署名式にはコリル・シンゴエイ外務筆頭次官、ダーグ・ハルテリウス外務次官、アンジェリン・K・ムシリ駐スウェーデン大使代理、カロリーネ・アッセルップSEA長官代行らが出席した。
協定の狙いは二つだ。第一に、再生可能エネルギー導入やメタン削減事業への投資を通じ、2030年までにケニアのNDC(国別貢献)上乗せを図る。ケニアの年間温室効果ガス排出量は1億トン未満で世界比0.1%にとどまるが、人口増と経済成長でエネルギー需要は急増中だ。第二に、スウェーデンが国内で削減困難な分を海外で低コストに確保し、2050年実質ゼロ目標の“費用対効果”を高める。
今回の協定は、スウェーデンにとってガーナ、ザンビア、ネパールに続く4件目の第6条正式協定となる。SEAはさらにドミニカ共和国やルワンダと覚書段階の協力も進めており、アフリカでのネットワーク拡大を急ぐ。
資金面では、UNDPとSEAが2023年に創設した「CARTA」ファンドから2,820万ドル(約44億円)がアフリカ各国に供与される見通しで、ケニア向け案件も優先候補に挙がる。初期は地熱発電効率化やアグロフォレストリー事業が検討され、2026年半ばに最初のITMO発行を目指す。
ケニア側は2023年改正気候変動法で排出権売買を明確に合法化し、DNA(指定国家機関)を設置済み。環境省は「2027年までに年間500万トン相当の高品質クレジット創出」を掲げ、NEMA(国家環境管理庁)の人員・システム拡充に向けスウェーデンの技術支援を要請した。
一方、スウェーデンは自国の炭素価格が130ユーロ超に達し、海外案件のコスト競争力が相対的に高まる。SEAのサラ・スンドベリ気候部長代行は「パリ協定6条は財源を越境させ、世界全体の排出削減を加速させる革新的な資金装置だ」と強調した。